記憶の定着度を上げる一工夫
岩波文庫から出ているレーニンの『哲学ノート』(松村一人訳)は、書名どおり、レーニンの読書ノートを詳細に再現したものです。
たとえば、「フォイエルバッハ『宗教の本質についての講義』にかんするノート」の部分には、〈気のきいた書きかたとは、なによりもまず、読者のうちにも精神があることを前提し、すべてを語りつくさず、或る命題がそのもとでのみ妥当しまた考えられる関係、条件、制限を読者自身に語らせることである〉と抜き書きをしたうえで、〈適切な言葉だ!〉とコメントしています。
コメントの内容を見ると、〈非常に正しい!〉〈よく語られている〉といった端的な感想以外にも、〈ヘーゲルは物自体が認識できることを認める〉〈ヘーゲルはカントの「彼岸」に反対する〉など内容を要約したようなコメント、さらに〈一般にいって、歴史哲学は非常にわずかしか与えない〉〈もっとも重要なのは序論であって、そこには問題の呈出においてすばらしいものが沢山ある〉と本全体に対する意見を書き込んだ文章もありました。
こうした「抜き書き」と「コメント」をノートに記していくことを習慣化すれば、記憶の定着度は格段に向上します。逆に言えば、ほとんどの人はこの作業を怠っているので、肝心なときに知識を引き出すことができないのです。