表面上の利回りの高さを金融機関もアピール

その結果、国債の流通利回りは低下した。言い換えれば、経済の実力が低下した。資金需要は停滞して金融機関の収益には下押し圧力がかかった。個人投資家も機関投資家も預金や国債の保有から満足のいく利得を得ることは難しくなった。

その状況下、仕組み債のリスクの高さの不安よりも、表面上の利回りの高さに魅力を感じる人は増えた。一方、金融機関にとっても仕組み債は、表面上の利回りの高さなどをアピールして個人資金を取り込み、手数料を獲得する手段として重要性が高まった。

しかし、2022年2月にウクライナ危機が発生すると、世界経済と金融市場の不安定感は急速に高まった。3月以降は、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ鎮静化のために金融引き締めを強化している。投資家のリスク回避の心理は強まり世界的に株価は下落した。

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さらに、世界的に金利が上昇している。長い目線で考えた場合の企業の価値は下落し、株価には一段と強い下落圧力がかかりやすくなっている。その結果、仕組み債の保有によって予想外の損失発生に直面する人が増えている。顧客トラブルに発展するケースも増え、複数の金融機関が仕組み債の取り扱いをやめ始めた。

投資の原則は「分かるものにだけ投資する」

金融庁は仕組み債の取り扱いについて、「真の顧客ニーズに基づく販売が行われているか懸念がある」と強い懸念を表明している。リスクの高さに加えて、仕組み債はコストも高い。通常の債券の運用に加えて、デリバティブ取引に必要な契約書類の作成、デリバティブの時価評価などには費用がかかる。

そのコストは、国内株で運用されるインデックスファンド(投資信託)などを上回る。それを負担するのは、仕組み債の購入者だ。しかし、手数料などは仕組み債の販売価格に含まれているため、具体的に把握することが難しい。

言い換えれば、仕組み債は複雑であるがゆえに、分かりづらい点が多い。命の次に大切なお金を増やすために運用を行うのであれば、可能な限り、分かることを増やすべきだ。“オマハの賢人”と呼ばれる米国の著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が指摘するように、投資するのであれば、その内容が分かるものにだけ投資する。分からないものに投資すると、経済や金融市場の環境変化などによって想定外の損失に直面することがどうしても増えやすい。

そうした投資行動を続けることによって長期の視点で資金を運用し、利得を確保することは難しい。同じことは、デリバティブを活用してリスクとリターンの特性をジャッキアップしたブル型・ベア型などの上場投信(ETF)などにも当てはまる。