それでも腑に落ちないという人は、「自分と同じ誕生日の人が少なくても一人いる確率」と勘違いしているのかもしれない。この場合は「自分の誕生日と、自分以外のすべての人の誕生日が違う確率」を求め、先ほどと同じく最後に「1」から引く。
Aから見てBの誕生日が違うということは「365-1=364日」のどれかであればいい。また3人目のCも364日のどれかであればいい。つまり、自分と同じ誕生日の人がいる確率は「1-(364÷365)×(364÷365)……」を人数分繰り返して確率を求める。
先ほどと違って分子の数は減らずに「364」で変わらない。その割り算の値は「1」に近い。そうなると、その割り算をいくら掛け合わせても、自分以外のすべての人の誕生日が違う確率が小さくなっていくペースは遅くなる。つまり、自分と同じ誕生日の人が少なくても一人いる確率はなかなか大きくならない。23人のときの確率を計算すると5.8%。これは日常生活での感覚に近い数字ではないだろうか。
最後に「火星に生物がいる確率は100%近い」という確率のパラドックスを紹介しよう。仮に犬が火星にいる確率を「1万分の1」とすると、逆にいない確率は「1万分の9999」。同じく猫がいる確率が「1万分の1」なら、やはりいない確率は「1万分の9999」。そうやって何かの生物がいない確率を膨大に掛け合わせ、最後に「1」から引くと、いくらでも100%に近づけられる。
しかし、どう考えてもおかしい。空気も水もなくて犬が住めない環境なら、猫やほかの生物だって住めない可能性が高いからである。そう、掛け算してはいけないケースで確率を掛け合わせるという決定的な失敗をおかしているのだ。