「最後の出口」が生き続けるための救いになる

もちろん、決して自殺を肯定しているわけではありません。

大空幸星『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由 あなたのいばしょは必ずあるから』(河出書房新社)

しかし、みずから命を絶つことが「最後の出口」として残されていることが、その人が生き続けるための救いになる。出口が存在するからこそ、もう一日生きてみようと思える。そんな状況があるのです。

その一方で、世のなかには「人には死ぬ権利があるはずだ」「自殺は死ぬ権利を行使することだ」と反論し、自殺を正当化する人がいます。

しかし、それは間違った捉え方です。自殺は「生きる権利」を行使できなくなった結果、起きるものです。

生きる権利というと難しく感じるかもしれませんが、単に、自分が毎日普通の暮らしを続けていくこと。それが、僕たちが生きる権利を行使し続けるということです。

ところが大きな困難に見舞われたとき、人は孤独にさいなまれ、自分が当たり前に使っているその権利を使えなくなり、死を選びたくなってしまうのです。生きることができないから死を選ぶしかないのに、「死ぬな」と言われると、袋小路に入って途方に暮れるしかありません。

そんな人を一人でも減らしたくて、僕はずっと「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と言い続けてきたのです。

僕たち相談窓口の役割は、追い詰められた状況にある人から出口を奪うことなく、そこに近づこうとしているその人に寄り添って、生きる方向へと進路を変えること。必ず存在する別の出口にその人が気づけるよう勇気づけ、話を聴くことです。

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