中間層も手をこまねいているうちに貧困層に陥る可能性

なぜ、こんなに高くても飛ぶように売れるのか──。背景にあるのは、2013年に始まった日銀の大規模な金融緩和である。とにかく景気回復を最優先するために、この9年間、日銀はゼロ金利どころか、マイナス金利にまで踏み込んで、お金をばらまいてきた。

正確にいえば、「インフレ率2%」という目標を掲げ、そこに向けてお金をじゃぶじゃぶ溢れさせることで、賃金上昇を伴う物価上昇を目指してきたわけだ。

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ただ、実際には、本当にお金が必要なところにまでお金は行き渡らず、もともとお金を持っている富裕層がよりお金を増やせる機会が与えられた。それが不動産にも流れ込み、1980年代後半のバブルのピークを超えるほどの「不動産バブル」につながっている。

加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって、日本の木造住宅にも用いられるロシア産の木材などの輸入が滞り、資材価格も高騰。不動産価格はかつてない水準まで膨らんでいる。そうしたなか、都心部の麹町などでも大規模なマンション開発が進み、不動産バブルに拍車をかけている格好だ。

今日住む家が見つからないホームレスや生活保護受給者が増加するのとは対照的に、富める者がより富む「二極化」は、まさに極限まで進んでいる。そうなると、以前ならそのような状況にもどうにか太刀打ちできた中間層も、手をこまねいているうちに貧困層に陥る可能性すら出てくるに違いない。

つまり、インフレで資源や食料はもちろん不動産価格までもが上昇する、大きな流れにありつけない日本人がますます増える可能性が高まっているのだ。