偏差値やブランドより、「居心地のよさ」が重要

受験勉強にしても、学力が向上していくのを子ども自身が実感できてモチベーションが上がっているというのであれば問題はないでしょう。それは、子ども自身の遺伝的素質に見合っていると考えられます。

しかし、子ども自身が「もう勉強したくない」と強いストレスを感じているのであれば、勉強の内容と遺伝的素質がマッチしていない可能性があります。そういう状況で、子どもに勉強を無理強いしたところでよい結果になることはないのではないかと思います。

中学や高校を受験するというのであれば、偏差値やブランドではなく、学校環境の居心地のよさや、自分の好みに合った先生がいるか、学びたい科目や教え方があるかを判断基準にするのがよいでしょう。オープンキャンパスなどで雰囲気を味わってみる、その学校に通っている知り合いや卒業生の話を聞いてみるなど、できるだけさまざまな情報から総合的に判断しましょう。

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学校にはそれぞれ個性の違いがあります。それは教育方針の違いによるだけでなく、校舎のつくりや教職員や事務職員の雰囲気、図書館やグラウンドの使い心地のよさ、学校周囲の環境などさまざまな面から感じ取ることができます。「ここは居心地がよさそう」と何となく感じるのであれば、その感覚を信じてみるのも悪くないと思います。

学力は5割が遺伝、3割は家庭環境で決まってしまう

人間の「内的感覚」というのはなかなかバカにできません。遺伝的素質が環境と相互作用していることの表れでもあるからです。あなたの勘が、この学校はいいなと感じさせてくれたら、それを大事にしてほしいと思います。

教育関係者にとってはいささか不本意な話かもしれませんが、あえて申し上げます。実際のところ学校が生徒にしてあげられることなどたかが知れています。極論を言えば、偏差値が高い学校は教え方が優れているから生徒が優秀なのではなく、優秀な生徒をスクリーニングして集めているから先生も教えやすく、よりレベルの高いことまで教えることができるわけです。

学校の差が生徒の学力や知能に与える効果量が小さいことは、行動遺伝学の研究でも証明されています。それは集団のばらつきのうちのせいぜい20パーセントかそれ以下の違いしか生まず、学力の差の50パーセントは遺伝、30パーセントは家庭環境なのですから。学校の影響がまったくないとまでは言えませんが、その影響は期待するほど大きなものではないということです。