「常に人がいる」など店の価値を前面に出した
結果はどうだったか。値上げ前の4月の数字を100とすると、トリミングの売上は100.2%、ホテルは127.9%、その他、近年力を入れているドッグトレーニングは149.9%、物販122.1%で、どの分野も前年を超え、5月の売上全体でも108%だった。
ホテルの伸びについては、5月にはゴールデンウィークもあり、コロナが収束状態に入っていくというタイミングも良かったと原口氏は言うが、タイミングだけならむしろこの機に安い他店に流れてしまう可能性もあったはずだ。
「自宅兼店舗で夜間も無人にならない」「フリースペースがあるので、ケージに入れっぱなしではない」など、安心や温かさなどの価値を前面に出し、それを伝えていることが功を奏したのだろう。「こちらが思うより、抵抗なく値上げを受け入れてくれている感じがしました」と原口氏は言う。
そしてこの結果、月間の粗利は前月比215%となった。「粗利の伸び率を計算したときは、何か間違っていないかと思いました」と彼女は言うが、まさにそれが、正当な対価なのである。
値上げに対して4つの反応があった
安売りや値引きを止めたことで、あなたのもとにクレームが来ることがあるかもしれない。どんな世界でも「1円でも安いもの」を求める人はいるからである。たった一人からでも「高い」と言われてしまったら、値上げに躊躇する気持ちが生まれるのも無理はない。
リーデレカーネにもそうしたお客さんはいた。より具体的には、お客さんの反応は大きく四つに分かれたそうだ。
まず、値上げを理解いただけないお客さん。そして「あ、そうなんですね。わかりました」と言ってくれはするものの言葉は少なめで、次回の予約は入れてくれないお客さん。
ただ、多かったのは次の二つのパターンのお客さんだ。「かなり上がるねー。でもしょうがないよね」と言いつつ予約を入れてくれるお客さん。そして、「あー、はいはい、全然大丈夫だよ」と、普段とまったく変わらないお客さん。
もちろん、こうしたお客さんが多いことの背景には、原口氏を始めスタッフらが日ごろから顧客との関係性作りを意識し、「スマイルドッグ通信」などの情報発信によりコミュニケーションを取り、良い関係を育んでいたことがあるだろう。関係性のある顧客は値上げの許容度も大きいからだ。