私が「巨人黄金時代復活」はないと断言するワケ

昔の巨人はいまのように、よそで育ったいい選手を金で集めて、あふれた人材を二軍や三軍で調整させるような余裕はなかった。

そのかわり、選手は厳しい競争を勝ち上がってレギュラーになり、つかんだ椅子は必死で守った。控えの選手もなんとかレギュラーからポジションを奪い取ろうと努力した。だから歴代の監督は、激しいポジション争いのなかから調子のいい選手を使うだけでよかった。

だが時代は変わった。1973(昭和48)年に川上巨人のV9が終わってからは、セ・リーグもパ・リーグもヤクルトや広島、西武などの新興勢力が台頭し、2017年からは工藤ソフトバンクに日本シリーズ4連覇を許している。この47年間で巨人が日本一になったのは7度だけだ。

巨人の親会社と歴代監督は、プロ野球の盟主として日本一奪還に全力を傾けた。しかし、V9後は黄金時代復活をめざす方法が間違っていた。

生え抜きの選手を育てて勝つチーム強化の本質を忘れ、他チームで育った有力選手を人気と資金力によってFAやトレードでかき集め、大リーグでは使えない外国人選手を次々に獲得した。

その結果、次代のレギュラー候補を育てるはずの二軍が、あふれた一軍選手の「調整工場」になっている。

これでは巨人に憧れて集まった若者たちのモチベーションを低下させ、やっと一軍に上がってもマシンガン継投やなんでも屋のユーティリティプレーヤーで終わるのでは、黄金時代の復活が実現するはずがない。

巨人二軍の本拠地であるジャイアンツ球場(写真=CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

選手を一人前に育てる気がない

2019年から原が3度目の指揮を執るようになってから私が心配しているのは、選手を一人前に育てる気があるのか、ということだ。

丸佳浩を広島から5年契約総額25億5000万円もの巨額投資で獲得したのをはじめ、毎年新外国人や他チームで育った選手をFAやトレードでかき集めた。それでも足りないと思ったのか、大リーグで肩を痛めてマリナーズの1Aに落ちていた岩隈久志まで迎え入れた。

結局、2018年に出戻り採用していた上原浩治は2年、岩隈も何も働かないまま2年で退団したが、二軍にはいまでも獲りすぎて余った外国人とFA複数年契約選手の余剰在庫がゴロゴロしている。

もっともこの間、捕手の大城卓三や内野手の吉川尚輝、外野手の松原聖弥、二刀流の増田大輝らが成長したが、問題はこの生え抜きたちの使い方だ。

バッティングのいい大城がバットで正捕手の座をつかんだかと思ったら、ちょっとヒットが止まると一塁の代役やベンチで代打要員。2020年、バッテリー以外の7つのポジションを守って得点圏打率.355を記録したスイッチヒッター・若林晃弘は昨季も途中出場が多く、96試合で打率.239だった。

足の速い増田も快足を生かした代走のほか、二塁、三塁、一塁、左翼、右翼のかけ持ち生活で、ユーティリティプレーヤーとかスーパーサブといえば聞こえはいいが、どこが本業かわからないなんでも屋でシーズンを終えた。

首脳陣は「やっと一軍の試合に出られるようになったんだからいいじゃないか」というかもしれないが、増田のように大学と社会人を経た選手が、いつまでも便利屋でいいはずがない。

このほか2020年、得点圏打率.448の勝負強さをみせたプロ17年目のベテラン・亀井善行も昨季は出番が少なく、打率.215、本塁打3で現役生活に幕を下ろした。