原がやっているのはアマチュア野球
こうした原の用兵には賛否両論があるだろう。
ひとつはFA移籍の丸は別格として、「2020年6月に楽天との交換トレードで加入したウィーラーや、昨季DeNAからFA加入の梶谷隆幸に巨人の生え抜き組が勝てないのだから仕方がない」という意見。しかしこれは、巨人がウィーラーや梶谷以上の選手を育てていない証拠でもある。
そして、やっと芽吹いてきた若い力を伸ばそうとせず、いつまでも穴埋めの便利屋に使っていたら自前の巨人復活は望めない。監督・コーチは選手の成長を待つのではなく、根気よく指導して不動のレギュラーを作り上げなければいけないのだ。
原のアマチュア野球のような用兵は、投手陣も例外ではない。
先発投手が5回100球をめどに降板すると、左打者には左、右打者には右投手を惜しげもなく繰り出してクローザーまでつなぐ。その典型が昨年6月8日、3-3で引き分けたオリックスとの交流戦だった。
前節、パ・リーグ最下位の日本ハムに1勝2敗で負け越した巨人は、先発・今村信貴が5回無失点、2-0で降板すると、畠世周が6回を0点に抑えたあと、7回には右打ちの紅林弘太郎に右腕・鍵谷陽平、左打ちの代打・T-岡田には左腕サイドスローの大江竜聖を投入。2死一、二塁になると、左の3番・吉田正尚に同じく左の高梨雄平を送ってショートゴロでピンチをかわした。
8回裏は中継ぎエースの左腕・中川皓太が4安打3失点と崩れて3-3の同点に追いつかれたが、この日、巨人が投入した投手は計9人。先発を除くリリーフ8人のうち中継ぎの4人はひとり1アウトずつ取る小刻みな継投で、マスコミは「原のマシンガン継投」と囃し立てた。
9回打ち切りの昨シーズン、巨人はこの試合の前まで7人登板の試合は9度あったが、9人の投入は球団史上初めてだった。
なかでも左打者キラーの中川はこの日が30試合目だったので、評論家の間では「連投の疲れではないか」という声も出たが、私が問題にするのはここではない。
原の極端な小刻み継投がよくない理由は、投手が成長しなくなるからだ。投手は左対右でも、自分の不利な相手を一生懸命抑えようとすれば成長する。不利な相手や状況を一生懸命乗り越えたとき、監督が「よくやったな」とほめてやれば、人間はそれでひとつ成長するのだ。才能があるからプロのユニフォームを着ているのであって、打者が左だから左投手、右だから右投手という使い方はアマチュア野球だ。
高梨や大江のように毎日、極端な左のサイドスローで左打者を抑えていると、いかにも継投策が成功したように見えるが、その投手はそれ以上成長しない。
また当人は休みもわからず、ベンチもいくら休ませたらいいかもわからない状態で左対左を繰り返していたら、だんだん成功しなくなる。
そしてなにより、左対左で成功し、打者が右に変わったら機械的に右投手に代えるようなことをしていたら、左にしか通用しない半端で未成熟な左腕投手になってしまう。