人を疲れさせる「延長自我」

鈴木氏はヨーカ堂転職前に心理学を学んだ。

鈴木氏は30歳でイトーヨーカ堂へ転職する前、大手出版取次のトーハンに勤務し、社内シンクタンクの出版科学研究所に在籍したとき、アンケート調査などの信頼性を高めるため、心理学の勉強に打ち込んだ。人間心理をよく知る鈴木氏によれば、聞き手を疲れさせる話し方には、心理学で「延長自我」と呼ばれるものもあるという。例えば、自分の持っているクルマや飼っているペットなどを通して自分を表現しようとする心理だ。

「誰かと話をするとき、“あいつはオレの友達でね”とか、“あいつの性格はよく知っている”とか、聞かれもしないのに人脈をひけらかし、自分を大きく見せようとする人がいます。

でも、聞き手にとってはどうでもいい話です。

話の中で、ある人物のことが話題になり、相手から、その人とはどういう関係ですかと聞かれたら、“大学の同窓だった”とか、“前に会社で一緒だった”と答えれば、相手も興味を持ち、人脈に感心するかもしれません。相手から一方的に延長自我を前面に出されたら、聞いているほうは退屈して参ってしまいます」

“見出し”話題を上手く使う

いくら知識が豊富でも、自分の話に酔ってしまうと相手を退屈させるだけで終わってしまう。

一方、最初は“見出し的”な話題だけを振り、聞き手の知りたいことや関心を引き出したうえで話ができれば、高く評価される。押しつけではなく、ひと呼吸置き引きつける話し方を身につけるべき、ということだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明、尾関裕士=撮影)