市場環境が劇的に変化しやすい外食業界では、資金回収に時間がかかることは致命的な経営リスクとなる。というのは、今、繁盛していても、1年後に繁盛している保証はどこにもないからだ。フレンチレストランのようにイニシャルコストがかかると、投資額を回収できていないにもかかわらず、市場環境の変化により店舗のハード、ソフトが陳腐化し、新たな投資を強いられるリスクも負うことになる。
客単価の高いフレンチレストランのほうが一見、儲かりそうだが、お客の“期待値”を基準に比較すると、お好み焼き屋のほうが営業コストをかけずに売り上げを確保できる。つまり、“損益分岐点”を低く抑えることができるわけだ。
さらに、現在の経済環境においては、単価の高いフレンチレストランのほうを“食べ控え”する人は多いだろう。来店頻度が減り、売り上げが伸び悩むと、損益分岐点の高いフレンチレストランは構造的に利益を出しにくい。一方、商品単価は安いけれども、損益分岐点の低いお好み焼き屋の落ち込み方は、フレンチレストランよりは少ないはずだ。
儲かる商売か否かは、客単価の大小だけでは測れない。景気低迷時には特に、損益分岐点の低いビジネススタイルこそが強い経営体といえそうだ。