技術の進歩が認知能力を鈍らせている

人と人が向き合い、相手のことを五感で感じることを、禅はとても大事なことと考えます。「面授めんじゅ」という言葉があります。ポジティブなことでもネガティブなことでも、大事なことは、きちんと顔を見て伝えようという教えです。

島津清彦『元上場企業社長の「禅僧」に、今の時代の悩みをぶつけてみた。心が回復する禅問答』(プレジデント社)

実際に顔を合わせると、あなたは相手の顔だけでなく、その人の手の動きや呼吸の仕方、汗をかく様子など、さまざまな情報をまるごとキャッチできます。

だから、相手についてわかることがあるし、言葉足らずでも自然と伝わることもあるわけです。

人間は本来そのような認知能力に優れた生き物ですが、コミュニケーションのテクノロジーが発達したことで、逆に本来の機能を働かせづらい環境になりつつあります。

苦手な人と向き合う機会をどんどん遮断することで、かえって人間関係を改善する力が弱くなっていく場合もあるでしょう。ここに、さまざまなメンタルの問題が生じる原因があると見ることもできるのではないでしょうか。

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