血圧が高くなるのは老化現象である以上、高齢者ほど高血圧になるのは当然で、今や男女ともに、60歳を超えると6割以上、75歳を超えるとなんと7割以上の人たちが「高血圧」と診断されている。自分が高血圧であるという自覚のない人も含めると、「患者数」は4300万人にも上るらしい。

2022年時点での日本の人口は約1億3000万人だから、日本人の3人に1人は高血圧というわけだ。2019年の国民生活基礎調査によれば、男女ともにデータが確認できた2000年以降、通院者率1位の傷病は「高血圧」なのである。

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老化現象を改善するのはなかなか難しい

高血圧そのものは本来、病気とは言えない。しかし、基準を超えた人は治療対象だから医者へ行けというのが日本高血圧学会の言い分である。仕方なく医者に行けば、「血圧が高いと動脈硬化がどんどん進んで、ほっておくと虚血性の心疾患とか脳卒中になりますよ」と脅される。それは確かに一大事だから、多くの人は「なんとかして血圧を基準値以下に下げなければ!」と考えるに違いない。

若い人たちなら食事の塩分を減らすとか、運動をするなどの生活習慣の改善でそれなりに下げられるだろうが、高齢者の場合はそもそも歳をとったから血圧が上がっているわけなので、生活習慣をちょっとやそっと変えたくらいじゃ下がるはずがない。

そこで登場するのが、「降圧剤」である。

降圧剤は文字どおり血圧を下げる薬なので、飲めばそれなりに効果はある。血圧が順調に下がっていけば「よかったですね~」などと医者に褒められて、いい気分になるかもしれないが、歳をとることは止められないわけだから、薬をやめればまた血圧は上がっていく。だから一度飲み始めた降圧剤をやめられる人はあまりいない。

「高血圧は長生きの敵」は正しいのか

しかも、血圧が下がるのは、決してよいことばかりではない。

血管の老化にあらがって血流を維持するための「高血圧」なのだから、それを無理に解消すると、血流が滞ってしまう可能性はかなり高い。そのせいで脳の働きが落ちたりとか、免疫機能に影響が及ぶことだって、十分に考えられる。また、高齢者の場合は血圧が下がることで転倒のリスクが高まることもよく知られている。

実際、降圧剤を飲んでいない521人の高齢者(75~85歳)を対象に行われたフィンランドでの調査によると、80歳のグループで5年生存率が最も高かったのは最高血圧が180mmHgを超えた人たちだったらしい。

もちろんこのデータだけで、血圧が高いほうがいいとまでは言い切れないが、「長生きするためには絶対に血圧を下げなくてはいけない」という医者の言い分は必ずしも正しくないことがよくわかる。