知られざる降圧剤ビッグビジネスのカラクリ
ところが多くの医者は、「血圧が高いと虚血性の心疾患や脳卒中のリスクが上がる」というデータだけを見せながら、せっせと薬を処方する。そのかいあって、日本の降圧剤市場はものすごい勢いで拡大している。
少し古い記事になるが、2017年11月14日付の日刊ゲンダイヘルスケアの記事によると、長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科の永田宏教授が厚生労働省のNDBオープンデータをもとに試算した結果、処方量の上位100品目までの降圧剤の合計金額はなんと5492億円にもなるらしい。
永田教授は「降圧剤はよほどオイシイ商売なのでしょう」と書くにとどめているが、「降圧剤をオイシイ商売にするため」に製薬会社が政治家やWHO、そして学会などに働きかけ、無理やり基準を厳しくさせたというほうが明らかに合点がいく。
そういえば2014年に、日本人間ドック学会が約150万人のデータをもとに、147/94mmHgまでは正常とする新しい基準の提唱を行った。すると案の定、2000年から「140/90mmHg以上は高血圧だ」と言い張っている日本高血圧学会は激怒したのだが、そのとき、医療費削減を目論む行政側の陰謀ではないかと一緒になって猛反発したのが製薬会社だったのである。
上の血圧は147mmHgまで正常です、ということになると患者の数は全然違ってくる(1800万人減少するという試算もある)のだから、その分売り上げが落ちてしまうしね。
「正しい基準値」を必死に広報する学会
結局このバトルは、「自分たちは将来の合併症発症の観点で基準値を決めている」と主張する日本高血圧学会の勢いに押されたのか、日本人間ドック学会のほうが「あくまで健康の目安であり、病気のリスクを示したものではない」という言い訳をして、事実上折れるかたちで決着したようだ。
しかし、日本高血圧学会のほうは、世間に「間違った基準値」が広まって降圧剤をやめる人が続出したら大変だと思ったのか、「高血圧学会から国民の皆様へのお願い」なる声明文まで発表し、また、147とか94という数字に大きな「×」印をつけたパンフレットまで作成して、「正しい基準値」の広報に全力を尽くしたのである。