スタートアップ140社に積極的に投資
東大は昨年末、研究成果をもとに起業する大学発のスタートアップに投資する600億円規模のファンドを創設する構想を打ち上げた。大学本部のある東京・本郷地区を「本郷インテリジェンスヒル(仮称)」と銘打ち、スタートアップや投資家が集まる一大拠点にする計画だ。欧米の有力大学に遅れをとっている大学発のベンチャーを資金・インフラの両面から支援強化する。
東大はすでに民間ベンチャーキャピタルの東京大学エッジキャピタルパートナーズと組んで、140社超のスタートアップに投資してきた。科学技術や経営に知見のある人材がスタートアップ経営陣と伴走し、創業前後から支援するのが強みだ。
国立大学は原則、スタートアップには直接出資できないが、21年の通常国会で成立した改正国立大学法人法で、22年4月から東大のほか京都大や東北大など指定国立大9校は出資が可能となる。東大のスタートアップ投資ファンドはその嚆矢となるもので、スタートアップに直接投資することも検討するという。まず東大が100億円程度を拠出し、外部の投資家らの資金も含めて10年間で600億円規模に拡大させる方針だ。
大学の再編・統合は「まさに銀行再編のよう」
また、東大出身の上場企業経営者らでつくる「東大創業者の会」は、在学生や卒業生が立ち上げたスタートアップに投資する「同窓生ファンド」を新設。20億円規模のファンドに育て上げる計画だ。同ファンドでは東大出身者が創業した不動産仲介サイトのグッドデイズホールディングスなどが出資する見通しで、同窓会のミクシィ創業者の笠原健治氏やユーグレナの出雲充氏など先輩起業家の知見も共有する。
経済産業省によると、国内の大学発スタートアップは、東大が最多の累計323社、京都大が累計222社(2021年度)と続くが、米国の有力大では年間1000社規模でスタートアップが創業されている。そのひらきの主因のひとつが投資力の差で、日本の大学スタートアップが調達する資金額は欧米に比べて見劣りする。
こうした大学の再編・統合について、メガバンクの幹部は、「まさに銀行再編をみるようだ」と指摘する。例えば、名古屋大と岐阜大の統合では、「地銀の再編を見ているようだ。大学名を地元地銀に置き換えても違和感のない統合劇じゃないのか。有名大学も地銀と同様に追い込まれている証だろう」(メガバンク幹部)というわけだ。
また、ある地銀幹部は、「持株会社となる東海国立大学機構のネーミングは、かつての東海銀行を想い起こさせますね。中部地区の金融機関が大再編して東海銀行を復活させてはどうかという構想は地元でいまも根強く燻っています」と感慨深げに語った。