食事制限が健康に与える影響
食事制限が代謝に与える影響のパスウェイは、大雑把に言うと図表3のようになります。
食事制限(Dietary restriction)の最上流にあるのは間欠的断食(IF=Intermittent fasting)です。これはタンパク質を24時間に1回摂ることで、インスリン抵抗性を遮断することが大きな意味を持つ。3段目左端のインスリン感受性の上昇(insulin sensitivity)は、インスリンが効き易くなるという意味で、肥満に与える効果が大きい。僕は断糖高脂質食の1日1.5食という形で対応しています。
4段目右端の炎症抑制(inflammation)は直接的に肥満に関係します。これを落とし込みするならば、例えば虫歯の治療をしなければ、あるいは金属の詰め物を外さなければ体内で起きている慢性炎症がインスリン抵抗性を引き起こしてしまうということ。
僕が常日頃から「どんなに断糖高脂質食を徹底し、サプリを摂っても、歯周病などの慢性炎症があるとインスリン抵抗性を引き起こすほか、体内で炎症を抑えることに機能や栄養が使われてしまい、痩せられない」と説いていたのは、こうしたパスウェイが前提になっています。また、これはあくまでも食事の方法ですが、食事の改善だけではヒトの失われた機能の回復にはなりません。これ以外にも、
○寒冷負荷によるベージュ脂肪細胞の誘導
○睡眠の最適化
○解毒(有害金属・細菌・化学物質など)
○ストレス抑制(アダプトゲン=非特異的にストレスに対応する機能をもつ植物)
など多数の要因が複雑に絡み合っています。これらを最適化してはじめて肥満、病気、不調から脱却できます。
断糖高脂質食は「安くつく」
断糖高脂質食が減量だけでなく、健康長寿をもたらす食生活ということが理解できたとしても、「食費がかかる」と言う人がいます。しかし、食事回数が1日1回で、野菜、果物、加工食品、お菓子などを食べないため、肉や魚のグレードを上げても食費はむしろ下がるのではないでしょうか。
また、人生100年時代と言われる昨今、健康長寿ではなく不健康長寿では、人生の後半になって医療費や介護費などがかさみ、むしろどれだけお金があっても足りない状態になってしまうことを想像してみてください。
2011年と少し古い調査ですが、厚労省の推計によれば、日本人の生涯医療費は、平均2500万円だそうです。日本の医療保険制度が破綻するのは目に見えていますが、今のところその恩恵に預かることで自己負担額は500万円ほどになる計算です。
注目すべきは、その約半分を70歳以降の時期に支払っているという点です。目先の食費を削り、ほぼ添加物とトランス脂肪酸と炭水化物(=糖質)のみで構成されたコンビニ弁当や、ファストフードばかりを食べ各種の慢性疾患になれば、結果として一生涯、余計な医療費を支払うことになってしまいます。
多くの人が健康を望んでいながら、断糖高脂質食にはなぜかお金を出し惜しみ、大病や手術で高額な医療費を支払うことになるかもしれない生活を続ける。僕はこれが不思議で仕方がありません。長い目で見て断糖高脂質食ほど有益な自己投資はないのです。