体育科の種目にドッジボールがない理由

実際、体育科の種目にドッジボールはない。なぜかと言うと、この運動には次の運動への発展性がないからである。学習指導要領に定められた「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」のいずれにも当てはまらない。人間を的にして楽しむような運動は、体育科教育には存在しないのである。

最近は、これを電子空間上で行う取り組みも出てきた。実際のボールが当たるわけではないので、身体的な痛さがないのはいい。ただ、人間を的にするという基本は同じである。新しいエンターテインメントゲームとしては有り得ると思うが、体育科教育、もしくは小学生への教育そのものとしていいものであるかどうかについては、正直懐疑的である。

実はこのドッジボールの問題点に気付いたきっかけは、海外で暮らしていた子どもたちからの一言だった。これまで外国の学校で学んできた子どもたちが日本に来て、日本の学校文化を学ぶ。そこでびっくりする遊びが、このドッジボールなのである。これを見た時の感想は、次の一言に集約される。

松尾英明『不親切教師のススメ』(さくら社)

「何なのこれは?」

海外では、一切やったことがなかったらしい。そして「なぜ人に思い切りボールをぶつけていいのか」が、どうしても理解できなかったらしい(通常は明らかにダメな行為であるので、考えてみれば当然である)。

ドッジボールは、血気盛んでエネルギーの有り余った子ども同士の遊びとして留めておくことが妥当であり、本当は読書でもして過ごしたい穏やかな性質の子どもを巻き込まない方がいい。

多様性を認めるこの時代だからこそ、そういった自由を認める姿勢も必要なのではないだろうか。親切心からどうしても「みんな」で遊びたいのであれば、せめてもう少し穏やかなものを選択しようという提案である。

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