韓国の学生には「決定論と絶望とあきらめ」がある
さて、80年代と違い今の私は、高校生や大学生のホンネに接する機会があまりない。そこで、韓国の大学院で学んだ後、大学で教鞭をとり学生たちに日々接する日本人の先生方から話を聞いてみた。
――大学で教え始めたとき、学生を一個人として尊重し丁寧に応対していたら、学科長から叱られた。強く指示・命令し、学生をこき使うくらいでないとだめだと言われた。幼い頃は家庭で、ついで学校、軍隊でと、支配・服従関係が日本より強い。大学の授業で〈両親が結婚に反対したら、あなたはどうします?〉という質問に、ほぼ全員が両親に従うと答えた。日本とはだいぶ違う。外見ではそういう古い体質には見えないんですよ。軍隊からもどって耳にピアスの穴をあけている男子がクラスに二人いて、彼女に言われてそうしたというんです。
「韓国のマネー志向は日本より強い」
「韓国のマネー志向、何でもカネカネという悪弊は、日本より強い」と嘆いたのは、国会議長まで務め引退した元政治家である。韓国に住む日本ビジネスマン夫婦が言った。
「韓国の友人も多く、仲良くしています。でも、息子が子供の頃から昆虫が好きで大学は生物学部。大学院に進んで昆虫を勉強すると言ったら、みな声をあげて笑うんです。虫だって、馬鹿じゃない。そんなのカネにならない、どこにも就職できないじゃないと」
ご夫人は憤慨していた。なんでもカネという風潮、それで人を判断する傾向が、たしかに強いと思う。
私の見るところでは、勉強でもビジネスでも、目の前の目標に向かって集中力を発揮し達成する能力が韓国は高い。日本より高い場合もあると思う。しかし、中長期的なこと、目に見えないことは後回しだ。日本人のノーベル賞受賞者が多く(2000年以降20人)、韓国は科学部門でまだゼロなのも理由があると韓国の友人は言う。
「科学の基礎研究は20年30年やっても成果が認められる保証はない。認められてもそれが生きているうちか死後かはわからない。カネや個人・組織の名誉ではできないことです。日本のように人類のため科学の発展のため、自分の損得でなくコツコツと励む姿勢が韓国にはまだ少ない。目端が利いてしまう」のだと。