複数の業態で進出し、どの戦略が一番いいかを追及していく

この300円業態に参入するダイソーは、冒頭で述べたようにTHREEPPYとStandard Productsのふたつのコンセプトの異なるフォーマットで進出しています。

THREEPPYは2018年に開業して、当時は比較的低年齢の女性が好みそうな雑貨やアクセサリーを中心に展開していました。それを今年「あいらしい。そして私らしい。」の新コンセプトでリブランディングして出店拡大し始めました。現在のコンセプトは商品領域としては3COINSとダイレクトに競合しつつ、ピンクやミントなどくすみ系のパステルカラーで商品を統一ことで「かわいい」が好きな女性消費者に訴求する商品ラインナップになっています。

写真はTHREEPPYマロニエゲート銀座店。
THREEPPYは、「あいらしい。そして私らしい。」をコンセプトに、大人可愛い雑貨を追求するブランドで、トレンドのグレーやピンク、ミントなどのくすみカラーを取り入れている。写真はダイヤシリーズ食器。

一方のStandard Productsはひとことで言えば無印良品の低価格競合を狙ったように見えます。無印良品と同じシンプルで機能的なデザインを追求しつつ、生活雑貨としての定番商品に狙いを絞り300円中心の手ごろな価格で比較的高品質な雑貨をそろえる方向性です。

ちなみにダイソーのような業界大手が300円ショップという新業態に進出する際に、このように違うコンセプトの複数の業態で進出するというのは企業戦略論としては定石です。どういうことかというと「その領域が今後の成長の本命だと思われる」場合において「ひとつの新規事業だけだと失敗したときに企業の命運が途切れてしまう」というリスクを避けるために、「あらかじめさまざまな形で異なる社員による異なるチャレンジを複数追及する」ことが定石なのです。

銀座のマロニエ通りにダイソー、THREEPPY、Standard Productsの3つの業態が集結しているのは、まさにこの戦略の縮図です。100円ではモノが仕入れられない現状において、ダイソーは以下の3つの戦略をとっています。

1.ダイソー業態で200円、300円、500円商品の比率を増やしていく
2.THREEPPY業態で300円プチプラ需要を取り込む
3.Standard Productsで300円中心の1000円までの品ぞろえでこだわり層を取り込んでいく

社内で競争させながら、最もいい戦略を追及していくわけです。