私たちがすべきこと二つ
だから、私たちがすべきなのは二つである。
できるだけ、器の蓋を開けておくようにすること。そしてなにより、器を大きくしておくことである。
よく大器晩成という。一般にこれは、大物は遅れて頭角を現すことを意味する。
だが、別の意味も考えられる。器の大きい人間になるためには、時間がかかるということだ。
それではいけないように思うのだ。自分にとっても社会にとっても。誰だって早くから社会に貢献したいだろうし、社会にとってもその方がプラスだ。
そこで私は、この文脈においては大器早成の方がいいと思っている。
早く器の大きい人になるべきだし、また器の大きい人が早くから成功する方が、社会にとってもメリットがあるはずだ。昨今の世の中は、割とそういう風潮があるように感じる。
社会起業家と呼ばれる人たちが増えているからだ。しかも彼らは総じて若い。
ソーシャルビジネスで成功する起業家たちの考え
そのトップランナーといわれているのが、ボーダレス・ジャパンの田口一成だ。
実に、ソーシャルビジネスだけで55億円もの売上を実現し、世界15カ国に40社を展開する社会起業家だ。貧困、難民、過疎化、フードロスといった問題を、単なるボランティアではなく、利益の出る仕組みにすることで次々と解決している。
その秘訣は、著書『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP研究所、2021年)のなかで余すところなく紹介されている。そもそも田口らは、社会課題を不条理ととらえている。だからこそ、それを解決することを至上命題としているのだ。
この世には、そんな崇高な志を持った人たちがたくさんいる。でも、若い人はすぐにソーシャルビジネスを立ち上げるのは大変だ。そこで彼らを支援し、ともに社会課題に取り組むための仕組みをつくったというわけだ。
まさに、私のいう大器早成のための器づくりといっていい。一番共感できるのは、そうしたソーシャルビジネスは、社会変革を起こすための手段であって、ビジネスそのものが目的ではないといい切っているところにある。現に、そのために利益は上げつつも、さまざまな工夫を凝らして、利潤追求が暴走しないようにしている。
これは、私が提唱する公共哲学のスローガンに合致するものだ。自分をいかに社会につなぐか、その本質にさかのぼって考えるのが公共哲学である。よくそのつなぎ方をスローガンのように表現することがあるのだ。