維新が「次の野党第1党に?」とメディアにもてはやされたのは、昨秋の衆院選の「議席4倍増」のせいだろう。しかし、繰り返し指摘しているが、維新はその前の2017年衆院選で、突如現れた希望の党に支持層を食われて議席を激減させている。昨年の衆院選は、希望の党の消滅によって、失った議席を回復したに過ぎない。

メディアはそれを分かっていながら「大躍進」「立憲に代わって野党第1党を目指す」と、実態を大きく膨らませて維新への期待感をあおった。その効果もあって、維新は確かに比例で伸びたが、選挙区では結果を出せなかった。

地力のない維新の続伸はかなり厳しい

参院選が終わっても、メディアの援護射撃もあって、短期的には維新の勢いが演出されるかもしれない。しかし、中長期的に見て、維新が今後伸びていくのは、正直かなり厳しいのではないかとみている。

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国会が始まれば、リアルパワーは結局のところ議席だ。衆院でも参院でも、維新の議席数は野党第1党の立憲の約半分。与野党の幹事長会談や国対委員長会談でも、野党を代表するのは第1党の立憲である。少なくとも次の衆院選までに、維新が主導権を握って野党の中核となる構図を作ることは、極めて難しいだろう。

維新は存在感を示すため「第三極」として自民党と立憲を等距離に叩き続けることになる。これも度々指摘しているように、維新と立憲では目指す社会像が真逆であり、決して共闘はできないからだ。

しかし、次に控えるのは小選挙区主体の衆院選だ。参院選と異なり、政界は好むと好まざるとにかかわらず、与野党の二大政治勢力に収斂されていく。維新の党内で「野党として自民党に対峙たいじする」か「立憲を叩くために自民党に近づくことも厭わない」かの路線対立が生じる可能性も否定できない(何しろ維新は岸田内閣の不信任決議案に反対するという、野党にあるまじき行動に出た経緯がある)。

実際に政界では、保守系の第三極政党が路線をめぐって対立し、時に党分裂に至ったケースが、過去にいくつもあった。

国民民主との連携強化はもろ刃の剣

こうした状況を乗り越えるには、維新は時間をかけてでも、前述したような党の地力をつけるべく地道な努力を続けるしかない。だが、実のところこちらも厳しい。

維新の党員数は約2万人と言われるが、地力のなさを指摘される立憲の党員数約10万人(協力党員を含む)の、さらに約5分の1しかない。連合のような全国規模の支持組織もない。維新がこの状態から立憲をしのぐ「地力」をつけるのは、並大抵のことではない。

維新が手っ取り早く全国的な支持組織を得たいなら、国民民主党との連携を強化し、連合内の民間労組を味方につけるくらいしか思いつかない。だが、これをやれば連合は確実に組織の分裂を生むだけに、簡単に乗れるとは思えない。現に参院選の京都選挙区は、この方法を試みて失敗したとも言えるのだ。

こう考えると、筆者はメディアが騒ぐほど、今後の維新に明るい材料を見ることはできないのだが、果たしてどうだろうか。8月下旬に行われるという、松井氏の後任を選ぶ代表選で、どんな議論が交わされるのか。同月に出されるという立憲の参院選総括と併せて見守りたい。

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