維新は「インディーズ政党」の域を出ていない

今回の参院選での維新の戦いに感じた印象はこうだ。維新は政党として十分な基礎体力を持たない「インディーズ政党」のまま、自分の存在を無理やり実態より大きく見せて、有権者に「政権を担える政党」への幻想を抱かせようとしたが、選挙区での伸び悩みでその幻想はいったんしぼんだのだと。

野党第1党とは「政権交代の選択肢」となるべき存在であり、その他の中小政党とは決定的に役割が違う。そして、まともな野党第1党となるための最低条件は、地域に根を張った「地力」を蓄えることだ。党の地方組織や党員、自治体議員の数を質量ともにそろえ、彼らに支えられながら、地元に根差した選挙区の国会議員を増やすことである。

野党が自民党の一強状態を崩せないのは、こうした地力をつけた政党が一つもないからだ。立憲が先の衆院選で接戦の小選挙区を勝ちきれなかったのは、こうした地力のなさによるものだし、維新は大阪でこそ確固たる地力があるとはいえ、その他の地域では、メディアに乗ることで存在が認知されているに過ぎない。やや極端な言い方をすれば、れいわなどと同じ「インディーズ政党」の域を出ていないのだ。

そんな維新が1度の衆院選で議席を大きく増やしたからといって、いきなり「インディーズ政党」の状態を脱し、政権を目指せる政党に飛躍できるはずがない。自民党から選挙で政権を奪った唯一の存在である民主党も、1996年の旧民主党結党から政権交代までに5回の衆院選を戦っている。

既成政党に飽き足らない層の「ふわっとした」票を集めただけ

維新が本当に「政権交代の選択肢」となることを望むなら、参院選では比例で勝つ以上に、選挙区で勝ち、地元の国会議員を多く誕生させ、来年の統一地方選に向けた拠点とすることが必要だった。

しかし、参院選における維新の比例票の集め方は結局、インディーズ政党的な手法から脱却していなかった。「身を切る改革」といったキャッチフレーズと、行政の長を兼ねている松井氏や吉村氏の「顔」を空中戦で売り込んで、既成政党に飽き足らない層のふわっとした票をかき集める、というやり方だ。率直に言ってれいわや、今回注目された参政党などの集票活動と、あまり違いを感じることはできなかった。

だから維新は選挙区で結果が出なかったのだと思う。大阪、兵庫以外で勝ったのが元知事を擁立した神奈川だけ、というのは、維新が政権を目指せる政党どころか、その前段である「全国政党」への道がなお遠いことを、全国に示すことになった。