補助金よりも「揮発油税」の引き下げをすべき

ガソリンを使う消費者の負担を下げたいと思うのなら、真っ先に「揮発油税」を引き下げるべきだったという声は根強い。

ガソリンには1リットル当たり24.3円の揮発油税(国税)と4.4円の地方揮発油税が「本則税率」として定められているが、租税特別措置として、さらに25.1円(国税24.3円、地方0.8円)が上乗せされていた。2008年には租税特別措置が廃止されたが、合計金額の53.8円が「当分の間」の暫定税率に据え置かれた。

もともと、ガソリン価格が高騰した時には特別税率の25.1円分を廃止する「トリガー(引き金)条項」が付いていたが、東日本大震災の復興予算を名目にトリガー条項が凍結されている。多くの識者から、これを解除すべきだ、という声が上がったわけだ。

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野党の国民民主党は真っ先に、凍結解除による減税を主張。岸田首相が検討するとしたことで、2022年度予算案に賛成した。ところが、岸田首相はその後、まったくトリガー条項の凍結を解除する姿勢を見せずに今日に至っている。

政府が減税よりも補助金にこだわるワケ

トリガー条項の凍結解除による、国と地方の税収減は1年間で計1兆5700億円になると財務省は試算している。すでに補助金への財政負担は半年余りでこの金額を上回っている。にもかかわらず、なぜ政府は、減税ではなく補助金にこだわるのか。

揮発油税は国と地方の一般会計に充てられるため、財務省からすれば使い勝手の良い税源を失いたくない、というのが本音だろう。過去の経緯から暫定税率の上乗せ分はいずれ廃止されるのが本来だったはずで、いったんトリガー条項でその分を減税すると二度と元に戻せなくなる、と考えているのだろう。

また、所管の経産省からすれば、補助金を元売会社に出せば、元売りに恩を売る形になり、役所としての権限強化につながる。減税してもその分価格が下がるだけなので、元売りから感謝されることはない。霞が関全体からすれば、予算規模は大きければ大きいほど、予算執行を通じた権限が増す。政治家にとっても話は同じで、補助金で業界に恩を売れば、選挙でも支持を得られる可能性が高まる。まさに、政官業の「鉄のトライアングル」の結束の結果だと言っていい。

今後、仮に原油価格が上昇を続けた場合、補助金なら元売りが手にする金額が増え続けるというメリットもある。減税はいったん引き下げたら、後は石油元売り会社の自助努力で価格を抑えるしかないが、岸田首相はすでに上昇分の半額補助を打ち出している。