打つ手はなくなりつつある

ただし40歳前後になってしまうと現実には孤立化が進むばかりで、地域の居場所に取り込み、悩みを相談できるようにするということはかなり難しい。

もちろん多様な居場所づくりの可能性はあるので希望は捨てないほうがよい。だが行政が直接居場所づくりを行う場合や行政の規定に従って行う場合は、活動が制約され、臨機応変な活動ができなくなる。子ども食堂の現状を見ても、NPOなどにせずに、あくまで任意団体として自由に活動した方が、地域やそれぞれの青少年に即した支援ができるという声も実際に子ども食堂を運営している人から聞いたことがある。さもありなんと思う。市民の力に頼ったほうがうまくいくらしいのである(拙著『永続孤独社会』参照)。

三浦展『永続孤独社会 分断か、つながりか?』(朝日新書)

そうした対策をしないままだと、日本人の中の格差拡大、分断が進み、国力が低下することは間違いない。

下流化した国民は必ずしも反政府的・反社会的な動きはとらず、政治への諦めの中で無気力化すると思われるからである。ただし今回の安倍元首相殺害事件には一定の政治性があることから、今後それらの動きが増えないとは言い切れない。

安倍氏は下流の男性にも約4割の人から評価をされており、評価をしない人との差はほとんどない(拙著『大下流国家』参照)。そのことが反政府的・反社会的な動きを抑えていたと思われるが、過去3年だけでも上述のような事件が起きたことを考えると、国民的な人気がない政治家が首長になった場合や何らかの危機的な社会状況が訪れたときには、それらの動きが頻出する可能性はあるだろう。

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