近年起こる凶悪事件の犯人に共通点はあるのか。世代論と郊外論に詳しいカルチャースタディーズ研究所代表の三浦展さんは「1975~1985年に生まれた男性で、いわゆる氷河期世代が目立つ。彼らには、生家は中流だったが、自身は非正規雇用で生活が不安定といった共通点がある」という――。
2022年7月10日、送検から奈良西署に戻る山上徹也容疑者=奈良西署
写真=東京スポーツ/アフロ
2022年7月10日、送検から奈良西署に戻る山上徹也容疑者=奈良西署

氷河期世代の重大事件が続いている

近年、親は中流だが子どもは中流になれない、昔なら中流になれた人が中流から落ちるという背景から生まれたと思われる事件が目立つ。

7月の安倍元首相殺害事件もそうで、思想上の理由はなく、犯人の母親の信仰した宗教団体と安倍元首相との関わりが原因であった。だが、それも教義の問題というより、母の宗教行動により家庭経済が破綻したことが犯人の進路に大きな影響を与えたことが今回の犯行の重要な原因であるらしい。

彼の父は京都大学卒、母は大阪府立大学卒だそうで、学歴だけ見れば「中の上」とも言える家庭である。彼も奈良県の進学校に通っており、成績も良かったようであるから、名のある大学に進学して、親と同様の中流家庭を築ける可能性はかなり高かっただろう。その可能性が母の宗教行動によって完全に閉ざされた、つまり中流階級を維持することが不可能になったわけである。

この事件以前にあった過去数年の大事件を見ると以下のようなものがある(年齢は逮捕時)。

・2016年、神奈川県相模原市の障害者施設やまゆり園で元施設職員の26歳男性(1990年生まれ)が施設に侵入して入所者・職員計19人を殺害した。「障害者には生きる意味がない」と話している。父は教員。本人も途中までは教員志望だった。

・26歳男性(1990年生まれ)がツイッターで自殺希望者を集め、座間市にある自宅アパートで、若者など9名を殺害、バラバラにして部屋に放置。事件は2017年発覚。

・2019年5月、小田急沿線川崎市多摩区内に住む51歳のニート男性(1967年生まれ)が有名私立小学校の親子数名を殺傷。親が離婚し伯父宅で育っており、いとこが入学したのがその小学校だった。

・2019年6月、上記事件を知って、練馬区の元農林水産省事務次官が44歳(推定1975年生まれ)の ニートの息子が同じような事件を起こす前にという理由で息子を殺害。息子は両親に暴力をふるっていた。

・2019年7月、大手アニメーション会社・京都アニメーションが42歳の男性(1978年生まれ)により放火され多数の社員が死亡。男性は少年時代にさいたま市在住。男性は埼玉県庁非常勤職員、コンビニ店員などをしていた。

・2021年8月、小田急沿線川崎市多摩区内在住の36歳男性(推定1985年生まれ)が、小田急線車両内で無差別殺人を狙い、数名が重軽傷。「勝ち組の典型的な女性を殺そうと思った」と供述。青森県出身、中央大学中退、非正規雇用者。

このようにこれらの事件の犯人は、ほぼ中流家庭育ちであると思われるが、家庭に何らかの問題があったケースも少なくなく、自身は非正規雇用者の男性であることが共通している(元農水相事務次官の息子は被害者)。

世代的には安倍元首相事件の山上が1980年生まれ、京都アニメ事件犯人が78年生まれと同世代であり、2008年の秋葉原無差別殺傷事件犯人(82年生まれ。22年7月死刑執行)、神戸市須磨区での児童殺傷事件の犯人(82年生まれ)とも同世代である。少し広めにとれば元農水省の息子や小田急線車内殺人未遂事件の犯人もほぼ同世代であり、1975年から85年生まれである(※)。ほぼいわゆる就職氷河期世代、ロスジェネ世代に当たる。

※就職氷河期世代…1993年から2005年に就職した世代で、高卒の場合は1975〜1985年生まれ、大卒は1970〜1980年生まれを指す