犯罪の地理的偏在…首都圏は小田急線沿線、関西圏は国道24号線沿線

地理的には、首都圏の事件は小田急沿線郊外で目立ち、関西圏では安倍元首相殺害事件、京都アニメ事件は国道24号線沿線である。安倍元首相殺害事件の山上容疑者は奈良市内で育ち、高校は近鉄橿原線の大和郡山市。大学はお金がなくて行けなかった。事件当時は近鉄奈良線の新大宮駅周辺に住み、事件が起きたのは奈良線と橿原線が交わる大和西大寺駅である。その2つの駅の間を24号線が走っている。

国道24号線沿線や近鉄沿線はこれまでにも大事件が多かった地域であり、2004年には京都市伏見区で小学生殺害事件(通称てるくはのる事件。犯人は無職、1978年生まれ)、奈良市で小学1年生女子連れ殺害遺棄事件(犯人は1968年生まれ)が起こっている。連れ去りは近鉄奈良線・富雄駅近く、遺棄場所は近鉄生駒線・平群駅近くの新興住宅地の造成地であった。このようにこれらの事件の現場は、いずれも近鉄沿線の大阪、京都への通勤圏の郊外地域である。

困った時に相談できるコミュニティーがない

古い資料だが1992年版の「警察白書」では過去20年間犯罪が増加している地域は、人口増加率はそれほどでもないが核家族化により世帯数が急増した地域であり、また新たに急増した世帯が多く住むのは従来田畑であった周辺地域に新市街地であるが、新市街地は一箇所に集中せず、市内各地に点在しており、住民の地域社会への結びつきが希薄であることが、犯罪増加の背景ではないかと分析している

それらの地域は自動車社会であり、人々の活動範囲が飛躍的に拡大し、短時間で警察所管区域や県境を越えて移動することが容易であるため犯罪の捕捉が難しいとも言う。そうした現象の典型的な地域として挙げられているのが、関東では北関東、関西では24号線沿線などの京阪奈地域であった(拙著『ファスト風土化する日本』参照)。

郊外の住宅街と車道
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そうした地域に生まれ育つと犯罪者になりやすいのではない。

だが、それらの新興住宅地では、困ったときに気軽に近所の人などに相談できるとか、住民同士が助け合うなどといったコミュニティー性が弱く、悩みがあっても家族、親族の中でしか解決できないという可能性はある。もちろんそれは新興住宅地に限らず現代の日本全体の問題であるが、言い換えると日本全体が伝統的な地域共同体から離れて新興住宅地になったのである。