中流というメッキが剝がれた地域

これらの郊外に育った少年たちの中に、長じて氷河期世代と呼ばれる世代が多くいたかは本稿では詳しく検証する時間がない。だがおそらくは1980年代に人口が増えた地域であり、1980年前後の氷河期世代が多く生まれ育った可能性はある。

たとえば大和郡山市の人口は1965年には45462人だったが85年には89051人、95年には95761人、その後人口は増えず、むしろ漸減して、2021年には85308人と85年よりも減っている

1980年代に一気に中流階級風の郊外住宅地になったが、バブルが弾け、失われた30年の間に中流というメッキが剝れた地域であるとは言えまいか。親が下流から中流に上昇できたのに、子どもは中流から下流に転落することが多い地域なのではないかという仮説を立てて今後詳しく検証をする意味はありそうだ。

つながりが絶たれた若い世代を襲う深刻な「孤独」問題

これらの犯罪の共通性を考えたり、最近の子どもの自殺の増加などを見ると、この20年ほどの間に日本では「つながりを絶たれた」人たちが若い世代で増えたのだと思える。

昔なら家族、地域社会、学校、会社などにいや応もなくつなぎ留められていた人間が、そのどれともつながらないというケースが増えたのだ。特に結婚しない人、正社員でない人が増えたことは社会の孤独度を助長する

渋谷スクランブル交差点で信号を待つ男性の後ろ姿
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三菱総合研究所の調査「生活者市場予測システム」2021年版で氷河期世代の男性の孤独度を見ると、35〜39歳の単独世帯では孤独を感じる人が35%だが、夫婦のみ世帯では9%しかなく、夫婦と子どもの世帯では16%と差が大きい。

配偶関係別では35〜39歳の未婚では孤独を感じる人が29%だが既婚では12%、離別では39%であり、既婚と未婚・離別の差が非常に大きい。40〜44歳でも未婚では29%だが既婚は13%、離別は37%である。

年収別では35〜39歳の200万円未満では孤独を感じる人が28%だが600〜800万円では16%である。

就業形態別では35〜39歳の正規雇用者では孤独を感じる人が19%、公務員では13%なのに、派遣社員では50%、パート・アルバイトでは28%、嘱託・契約では25%である。

また家族とのコミュニケーションへの満足度別では40〜44歳で「不満」な人は孤独を感じる人が53%もあり、「満足」な人の10%と大きな差がある。