海外知名度ゼロから「年間20万台」という大胆な目標

さらに大きな問題は、今まで海外ではクラウンは事実上販売されておらず、顧客ベースもなければブランド認知もないということである。要するに、まったく新しいモデルとして発売しなければならないのだ。

まったく新しい顧客を開拓しなければならない新しいモデルが、日本の伝統的ユーザーが安心して見られるような保守的なスタイリングであっていいはずがない。世界の人がきつけられるような、フレッシュで斬新なスタイリングを持つことが必須である。

この点に関しては、日本の事情より海外での見え方のほうが圧倒的に優先されるべき、と判断されたと考えられる。なにしろ40カ国、年間20万台を売ることが目標なのだ。

そのために今までのクラウンの呪縛からはいっさい解放されて、まったく新しいモデルとしてデザインされたのである。

「クロスオーバー」「SUV」「BEV」

そして、コアモデルとして開発されたのが「クラウン クロスオーバー」モデルである。

このクロスオーバーは、まったく新しいセダンのカタチを追求して開発されているので、ハッチバックではなく独立したトランクを持つ作りとなっている。非常に流麗で魅力的なスタイリングだと思うが、あくまでセダンなので多用途性には欠ける。

一方で、世界の潮流は多用途性に優れた5ドアのSUVであり、販売量を確保するためにはラインアップに5ドアSUVはマストである。

新型クラウンでは5ドアのSUVは2種類が用意された。ユーティリティーに優れる「クラウン エステート」と、スポーティーでスタイリッシュなクーペSUVである「クラウン スポーツ」である。「クラウン スポーツ」は昨年(2021年)12月のトヨタBEV(バッテリーEV)戦略発表会でも展示されており、少なくともBEVバージョンがあることは間違いない。