広島の町の上空で炸裂した核兵器「リトルボーイ」
アメリカのハリー・トルーマン大統領が声明で、投下した爆弾は「atomic bomb(原子爆弾)」だと明かしたのは、その16時間後だった。
現在の原爆ドームから東に約130メートル離れた島病院の上空で、「リトルボーイ」と名付けられた核兵器は炸裂した。それは「核分裂」のエネルギーを利用し、従来の火薬爆弾と比べて桁違いの爆発力を持っていた。原料は、核燃料として使用されるウラン235。濃縮したウランを、核分裂の連鎖反応が始まる臨界量より少ない2つのかたまりに分けておき、爆薬の力でぶつけた。すると、100万分の1秒という極めて短い時間に核分裂が連続して起こる。
この時、一度に膨大なエネルギーを放出し、たった1発の爆弾でも壊滅的な被害をもたらした。
地表面は鉄を溶かす高温となり、熱線と爆風が襲う
爆発地点は、地上約600メートル。爆発点での最高温度は、通常の爆弾では5000度程度だが、原爆は100万度を超えていた。爆心地の地表面の温度は3000〜4000度。鉄の融点である1538度を優に上回った。爆心地から約1.2キロの範囲で遮蔽物のない場所にいた人は表皮が瞬時に炭と化し、内臓も熱傷障害を受けほとんどが即死、または数日内に死亡した。
爆風による被害も甚大で、爆心地から約2キロ以内の建物が大損害を受けた。熱線と爆風は甚大な火災を引き起こし、複合的に死傷者を増やした。
原爆が「非人道兵器」であり、その存在を許してはならない理由は、熱線や爆風による殺傷能力だけではない。他の兵器と比べた最大の特徴は、放射線を放出する点にあるだろう。放射線は細胞を傷つけ、壊し、出血や脱毛といった急性障害の他、がんなどの深刻な病を引き起こす。
原爆の惨禍を生き延びた人にも、被ばくの影響がいつ、どのような形で表出するかわからない。放射線の人体に対する影響は完全に解明されてはおらず、今も研究と議論が続く中、被害者の心身は蝕まれ続けている。そして、その影響に対する不安は世代を超え、放射線による被害に「終わり」は見えない。