選挙で勝てるかどうかを最優先するのが自民党らしさ
宮城で反発が広がるのも必然だった。16年参院選で桜井氏を野党統一候補として支えた市民団体からは「私たちの政策協定を裏切るもの。支援した県民への許しがたい行為で強い怒りを感じる」「ただちに辞職して、選挙をして欲しい」との批判が上がった。宮城自民も「敵」として戦った桜井氏をすんなり受け入れられるはずもなく、「共産と手を組んだ人と自民が組めるわけがない」(自民系県議)など非難が広がった。
自民党宮城県連は21年12月、翌年の参院選での地元県議の擁立を決定した。この方針を事前に伝えるために党本部に赴いた県連幹部に茂木敏充幹事長が言ったのは「白い猫でも黒い猫でも、ネズミを捕る猫がいい猫なんだ」。中国の鄧小平氏の言葉を使って、良い悪いよりも好き嫌いよりも、選挙で勝てるかどうかを最優先する考えを示した。「県連が擁立しようとしている県議で参院選に勝てるのか」という強い牽制だった。
さらに党本部側は、桜井氏と県議との間で、一般県民を相手にした世論調査で決着をつけることを提案した。調査で物を言うのは、知名度だ。県議は自らの選挙区以外では広がりを欠く一方、98年から全県での選挙を戦ってきた桜井氏が有利なのは明らかだった。予想通り、桜井氏が、県議を上回って自民公認を勝ち取った。
6年前に共産と組んだ政治家であろうと、次に勝てるとみれば、どんな理屈をつけてでものみ込んでいく。そんな融通無碍な自民党らしさが、桜井氏擁立に現れていた。