自民党の石破茂衆院議員は「次の首相にふさわしい人物」として注目されてきた。しかし、前回の総裁選では出馬することもできなかった。石破氏はことあるたびに党内の有力政治家から公然と批判され、現在も冷遇されている。なぜ石破氏は離党しないのか。自著『異論正論』(新潮新書)からお届けする――。

※本稿は、石破茂『異論正論』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

自民党/記者会見する石破元幹事長
写真=時事通信フォト
自民党石破派(水月会)の臨時総会後、記者会見する石破茂元幹事長=2021年12月2日、東京・永田町の衆院議員会館

「こうすれば一発解決」そんな政治家は信用できない

自著『異論正論』(新潮新書)で、国のグランドデザインのような大きな問題を政治は考えていかなければならない、そうしないと日本は立ち行かなくなる、といったことを書きました。

これはずっと私が訴え続けていることでもあります。ところが、こういう話をすると「そんなことはいいから、どうすれば解決できるのか。早く答えを言え」といった反応が必ずあります。あるいは「評論家じゃないんだから早く案を出せ」と。

しかし、ワンポイントの政策で解決できるような話ではないからこそ、ある意味仕方なく先送りされてきたともいえるのです。仮に日本が抱える諸問題について「こうすれば一発解決」式の話をする政治家がいるとすれば、私は信用できません。

たとえばすでに述べたように税制を変えることで好転することはあるでしょう。それによって個人の可処分所得を増やすことはできる。経済を好転させるきっかけにはなりえます。

また、近年私が取り組んできた地方創生も持続的な国づくりには欠かせない政策です。できることはすぐに実行に移すべきでしょうし、大臣でいる間に手をつけ実現させたことも数多くあります。

魔法の杖のような政策は存在しない

しかし、これら個々の政策でグランドデザインを変えることはできません。一つの内閣だけでできるものでもありません。

そろそろ与野党関係なく、共通の地盤で議論をする必要があるのではないでしょうか。その場合には、共通の資料、認識が必要となります。

国のグランドデザインをどうすべきか、といったことは前述の通りあまり受けません。「そもそも論」のようなものは一般の国民にも好まれないのです。

しかもこの先、政治は「果実の分配」のような美味しい話だけではなく、むしろ「不利益の分配」について正直に国民に伝えなければなりません。

政治家も官僚もメディアも「そもそも論」を避け、また時には嘲笑し、「そういう話はまた今度」と先延ばしにし続けてきました。