しかしその時、私は谷垣禎一氏をおいてこの難局に適した総裁はいないと確信していました。
「国民が自民党に猛省を促した後の総裁として、谷垣総裁ほど適任だった方はいないと思います。特筆すべき誠実さ、人柄の良さ。それこそが、与党時代の自民党に欠けていると国民が思ったものでした」
これは当時、拙著(『国難』)に書いた文章です。
その谷垣総裁の下で私は政調会長を拝命しました。そこで自民党に欠けていると思われていたもう一つの要素、すなわち政策立案能力を高めるために、多数乱立していた部会をわかりやすく集約したり、年次にかかわらず政策的な能力や説明能力の高い議員を部会長に抜擢したり、といった改革をやらせていただきました。
そして伊吹文明先生にとりまとめをお願いし、党内で侃々諤々の議論を重ね、2010年には新しい綱領を作っていただきました。
「勇気を持って自由闊達に真実を語る」
共産党と比べると、自民党の綱領が話題になることは少ないのですが、この時の綱領はとても良くできていると今でも思います。いくつか抜粋してみましょう。
「勇気を持って自由闊達に真実を語り、協議し、決断する」
「多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」
「努力するものが報われ、努力する機会と能力に恵まれぬものを皆で支える社会。その条件整備に力を注ぐ政府」
「多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」
「努力するものが報われ、努力する機会と能力に恵まれぬものを皆で支える社会。その条件整備に力を注ぐ政府」
下野した際の反省を十分に生かしたこうした綱領を目にして、自民党は変われるかもしれない、その本質を取り戻すことができるかもしれない、という期待を抱いたものです。そう感じてくださった支持者の方もいたことでしょう。実際に、谷垣総裁時代に自民党はかなり生まれ変わったのだと思います。
最近、こうした期待を抱いてくださっていたはずの昔からの支持層の心が離れていっているように感じることが少なくありません。
綱領から言葉を引けば、勇気を持って自由闊達に真実を語り、政府を謙虚に機能させる、そうした姿勢がいま一度必要とされているのではないかと思います。