厚生労働省は「シェア80%を目指す」という方針を出したが…
——普及率80%を急ぎすぎたのではないでしょうか。
【田中】2015年に「ジェネリック医薬品の数量シェア80%を目指す」骨太の方針の素案が出された時、われわれ業界団体は、達成時期に関しては素案の時期より5年ほど時間の猶予をいただきたいと相談をさせていただきました。目標の設定を2018年3月ではなく、2023年の3月まで待ってほしいと。
当時の生産能力では80%の数量を生産することができず、製造設備を新規に投入し、新しく工場も建てないといけないような時でしたので、そのためにはプラス5年程度は必要ですと相談させていただいていました。当時の歳出改革でも発言させていただいています。また当時の厚労省も理解を示してくれ、多くの国会議員の皆様にも、われわれの協会の言い分が伝わるような活動をしていただきました。
しかし、残念ながら、「2016、17、18年」の3年間の社会保障費の伸びを1兆5000億円に抑えるという目的があったことも背景にあったようで実現は叶いませんでした。結果的に、「骨太の方針2015」の中に「ジェネリック医薬品の数量シェアは2017年中に70%以上とするとともに、2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする」という目標が掲げられました。
そしてこの数値目標を達成するためには、ジェネリック医薬品メーカーは年間で約15%程度の成長をしないといけませんでした。そのために中途採用を増やしたり、あるいは新入社員の採用人数を増やしたり、かつ、教育にも苦労しながら取り組んできました。品質を担保する教育に頑張り続けた会社と、それを疎かにして、目先の売上に走った会社があると思われます。それが分かれ目になったと思います。
供給不安の解消には早くても2年程度はかかる
——供給不安は2年で終わるのでしょうか。
【田中】正直、2年で済むかどうかは分かりません。今回の問題で日医工の分を一生懸命残ったメーカーでカバーしていますが、今ある設備ではもう限界に近い状況だと思います。増産するために、既存の工場の設備を増強し、新しい工場の建設の計画を立て取り組んでいます。ただ医薬品を増産して製造するためにはバリデーション(*2)という作業が必要になります。
今ある工場を、道路1本離れた所に移して増産するだけでも、新たにバリデーションが必要となり、データに問題がないか繰り返しチェックが必要となります。1つの品目を別の工場に移すだけで、6カ月ほどかかります。そこから計算していくと、早くて2年から2年半ぐらいかかるという見方が多いかと思います。
(*2)医薬品・医療機器を製造する工程や方法が正しいかどうかを検証するための一連の業務のこと。科学的根拠や妥当性があるかを調査する。