大手2社の判断によって状況が変わる可能性も
大きなものは医薬品の原薬に関する問題です。医薬品の原薬の生産は先発品、ジェネリック医薬品を問わず海外に依存しており、日本は6割程度を海外から輸入しております。コロナの影響で原薬を製造している国がロックダウンして工場の生産がストップした影響などがありました。
その後、医薬品のサプライチェーンの問題として経済安全保障としても取り上げられることになりました。現在は、原薬の問題は解消されております。
最後に5つ目として2021年11月29日に発生した日立物流(東京都中央区)の子会社の物流倉庫による火災が挙げられます。当協会の会員会社でも被害を受けた会社がありました。
なお、今後の可能性として、ウクライナ危機による影響が懸念されます。各社、その確認と対策を講じているとのことです。ジェネリック医薬品でいえば沢井製薬と(田中氏が所属する)弊社東和薬品が、供給量が相当多いので、この2社がまずは先頭をきって出荷調整を解除しないと、それ以外のメーカーは解除しづらいと思います。大手が解除しないのに、うちだけ解除して注文が集中したらたまらないという気持ちもあると思います。
供給不足が原因の健康被害は出ていない
——ジェネリック医薬品が不足して、健康に問題が出たケースはあったのでしょうか?
【田中】調べてみたのですが、特定のジェネリック医薬品が不足したことで健康上、実害が出たというケースは把握できませんでした。なんとか別の製品で代替していただいているものと思います。代替品は成分を変えて対応することはあります。例えば花粉症の薬、よく知られている薬としてフェキソフェナジンなどがありますが、別の成分の薬もあります。
——骨粗鬆症の治療薬エルデカルシトールの不足に困った人が多いですが。
【田中】このジェネリック医薬品は2020年8月に2社が発売しました。発売後2カ月ぐらいでかなりジェネリック医薬品に置き換わりました。結局、ジェネリック医薬品メーカーは2社しか出せませんでした。ジェネリック医薬品メーカーが新製品を出さないのはいろいろなケースがあります。今回は、先発メーカーが特許権侵害の訴訟を行っており、裁判を避けるために出さないケースでした。
そして、その訴訟中に市場に供給される数が減少したことにより、供給不安が発生してしまいました。その後、裁判で先発メーカーの訴えは棄却されています。日本骨粗鬆症学会も、エルデカルシトールの代替品への切り替えを避けるよう求める通達を出されています。今は市場に供給される数も元に戻り、問題はほぼ解決しています。