2516点の医薬品が出荷困難な状態になっていた

——供給不安になっている薬の数は?

【田中】日本製薬団体連合会(日薬連)が2021年11月18日に発表したアンケート結果の数字によりますと、3143品目が8月末時点で「欠品・出荷停止」、「出荷調整」となっていました。調査対象の20.4%を占めます。この数字はジェネリック医薬品だけではなく、すべての医薬品です。薬が全くないわけではないのです。

例えば3143品目の中には、本当に薬の在庫がないというものもあれば、薬はあるけども、限定的に出荷を停止しているというものがあります。限定的に出荷を停止しているというのは、例えば私の会社が、ある医療機関とお付き合いがあり、薬を使っていただいている場合に過去の実績分は確保します、というようなことです。

ところが今までお付き合いがなかった、もしくは違う薬を使っていました、という場合、ご注文をいただくとなると、新規のご注文となりまして、現在は対応ができない状況ですということになります。私たちが2022年5月に、会員社を対象に行った調査では2516点の流通が滞っていました。

供給不安が続いている5つの理由

——なぜいつまでも出荷調整が続くのでしょうか。

【田中】現状の供給不安には、大きく5つのパターンがあると認識しています。1つ目は、当初の小林化工、日医工の事案に起因するものです。小林化工は2021年2月9日付で116日の業務停止の行政処分、その後、日医工が2021年3月3日付で医薬品製造業32日間、医薬品製造販売業24日間の業務停止の行政処分を受けました。

行政処分を受け、陳謝する小林化工の小林広幸社長(右)ら=2021年2月9日、福井県あわら市
写真=時事通信フォト
行政処分を受け、陳謝する小林化工の小林広幸社長(右)ら=2021年2月9日、福井県あわら市

当初、小林化工の影響は、残りのジェネリック医薬品メーカーによる増産対応、在庫の放出等で何とかカバーしました。そのようなギリギリの状況の中で、さらに日医工が業務停止となりました。日医工は品目数も数量も多かったため、各社の対応で十分にカバーしきれていない現状があります。

2つ目は現在、当協会会員会社で進めている自主点検に起因するものです。現在、GE薬協で進めている信頼回復に向けた取り組みの中で製造販売承認書(医薬品を作るための設計図のようなもの)と製造の実態に齟齬そごがないかを、各社と協議して定めた一定の基準に則って自主点検を行って来ました。一部自主回収が発生し、新たな出荷調整のような問題が発覚したというものです。

3つ目は、間接的に発生したものとして、各社の増産対応に起因したものになります。ジェネリック医薬品は少量多品種製造であるため、綿密なスケジュールが立てられております。また医薬品には複雑な製造工程があるものも存在します。製造するのに他の医薬品の倍の時間が必要なものや、製造工程が難しいものもあります。

4つ目はコロナの影響です。これには軽微なものと大きなものとがあります。軽微なものではコロナワクチン接種後の発熱時に使用するアセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)です。急激な需要があり一時的に足りないことがありました。