生活保護“捕捉率”が先進国の中でダントツ低い

2015年4月には、年金給付額を物価・賃金の伸びより低く抑えるマクロ経済スライドがはじめて発動され、2.3%の物価上昇に対し年金上昇は0.9%増に抑えられた。

2020年度も、マクロ経済スライドが2019年度に続き2年連続で発動され、物価変動率に比べ年金給付は実質0.3%削減された。

消費税の増税の一方で、年金は削減されているのである。高齢者の生活は苦境に立たされ、前者の原告の陳述にあるように、衣類も満足に買えない生活状況だ。

高齢者の貧困が深刻化し、生活保護を受給する高齢者が増大しているものの、それでも、生活保護の捕捉率(生活保護基準以下の人で実際に生活保護を受給している人の割合)は、2割と推計されており、他の先進諸国に比べれば、日本は断トツに低い(イギリス87%、スウェーデン82%など)。

恥の意識(スティグマ)や家族に迷惑をかけたくないという気持ちから生活保護を受給していない人も多数いる。深刻なのは、後者の原告の陳述にあるように、支援が必要な人ほど、国に助けを求めず、自己責任論の呪縛にとらわれていることだ。なぜ、こうした事態になったのか。消費税の導入から、その経緯をたどってみよう。

消費税増税は、歴代政権を揺るがしてきた

1989年4月に税率3%でスタートした消費税は、8年後の1997年4月に5%に引き上げられ、さらに、安倍晋三政権になって、2014年4月に8%に引き上げられた。この間17年かかっている。8%から今回の10%への引き上げ(食料品等は8%のまま据え置きとはいえ)までは、わずか5年半である。同じ政権(内閣)のもとで2回も消費税が引き上げられ、税率も倍になった(5%→10%)。

導入から30年余り、消費税は前身の売上税のときから、時の政権の命運を左右してきた。

税収における直接税(所得税や法人税など)の比率を下げ、間接税(消費税など)の比率を高める「直間比率の見直し」をはかるべく、大型間接税の導入が提案されたのは、1979年の大平正芳内閣の一般消費税にまで遡るが、法案として提出されたのは、1987年の中曽根康弘内閣のもとでの「売上税」が最初だ。

しかし、売上税は、国民の強い反対にあい、一度も法案が審議されないまま廃案に追い込まれ、中曽根内閣も退陣に追い込まれた。

売上税の頓挫に懲りた与党自民党と大蔵省(当時)は、売上税に反対した業界を懐柔するなど、周到に準備を進めて、売上税から消費税と名称を変え、竹下登内閣のときの1988年に法案を提出、衆参両院とも強行採決の連続で、法案を成立させた。

そして、1989年4月に、消費税が導入され、この暴挙のため、竹下内閣は、内閣支持率を一桁に落とし総辞職、かくして、しばらくは、自民党政権のもと消費税には手を付けないことが通例となった。