増税とコロナのダブルパンチで老舗でも倒産が相次いだ

2020年3月、内閣府が発表した2019年10~12月期のGDP(国内総生産)改定値は、年率換算でマイナス7.1%と大幅に落ち込んだ(2月の速報値マイナス6.3%を下方修正)。GDPのマイナス成長は5四半期ぶりで、消費税増税に加え、2019年秋に相次いだ台風災害などの影響で、GDPの約6割を占める個人消費が前期比2.8%のマイナスとなり、民間企業の設備投資も前期に比べ4.6%の落ち込みとなった。内需の低迷は明らかで、新たな消費不況に突入したともいえる。

2014年4月の8%への引き上げの時も、消費が大きく落ち込んだものの(現在まで増税前の水準に回復していない)、外需・輸出が好調だったために、なんとか持ちこたえることができた。

今回は外需・輸出も、米中貿易摩擦の影響で低迷、また日韓関係の悪化で韓国からの訪日客が激減し、地方経済を支えてきた観光業に陰りがみえていた。山形県では、消費税増税の影響で、2020年1月、老舗の百貨店「大沼」が倒産、従業員約200人が解雇されるに至った。愛知県蒲郡市の温泉旅館も倒産するなど観光業を中心に中小企業が大きな打撃を受けつつあった。

ここに追い打ちをかけたのが、2020年1月からの中国発の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大だ。

世界経済を牽引してきた中国の経済成長が大きく鈍化し、日本国内でもインバウンドの中国人観光客が激減し、観光業と地方経済に壊滅的な打撃を与えている。

中国でも人やモノの移動が制限され、進出した日本企業の現地生産に影響が出ている。国際的なサプライチェーン(部品供給網)が断ち切られ、中国からの部品調達が遅れ、日本国内の生産活動も滞り、製造業を中心に軒並み企業業績を下方修正する緊急事態ともいえる状況だ。消費税増税とのダブルパンチで、景気が急速に悪化し、企業の倒産と失業者が急増しつつある。

社会保障費は充実するどころか削減されている

一方で、冒頭の現場からの声にみられるように、安倍政権のもと、消費税は二度にわたり増税されたが(5%→8%→10%)、社会保障は充実するどころか、削減されている。

伊藤周平『消費税増税と社会保障改革』(ちくま新書)
伊藤周平『消費税増税と社会保障改革』(ちくま新書)

2020年度予算でみると、医療・介護などの社会保障費の自然増部分(高齢化の影響などで自然に増大する部分)が概算要求段階の5300億円から4100億円に削減された(1200億円の削減)。安倍政権になってから2018年末までを振り返ってみても、医療崩壊をもたらしたといわれた小泉政権の時代を上回る1.6兆円もの大幅削減がなされてきた。

同時並行で、社会保障削減を内容とする法律が次々と成立、生活保護基準や年金などの引き下げが断行されている。

中でも、社会保障の中心をなす社会保険制度(年金・医療・介護)については、保険料の引き上げ、給付水準の引き下げ(マクロ経済スライドによる年金水準の引き下げ)、給付要件の厳格化(特別養護老人ホームの入所対象者を要介護3以上に限定など)、患者・利用者の自己負担増が次々と断行され、保険料や自己負担分を払えない人が、必要な医療や介護サービスを受けられない事態を招いている。また、年金から天引きされる保険料の増大や年金給付の減額は、年金生活者の生活困難を増大させている。

そもそも、消費税の増税は、社会保障の充実のためではなかったのか。この間、安倍政権のもとで進められている社会保障の削減をみれば、それが虚偽であったことは明らかだ。消費税の増税と社会保障削減で、国民は生活不安(とくに老後の不安)を抱え、財布の紐が固くなって貯蓄に回している。これでは消費が低迷するのも当然だ。

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