忙しい親は食事の時間を大切にしよう

このケースにおいて、卒業制作を締め切り7日前のギリギリまで放置していたのはA君だが、両親は忙しさのなかで座視していた。特に母親は切羽詰まった状況で、義父と実母の介護に忙殺されていた。

河本敏浩『我が子の気持ちがわからない』(鉄人社)

ではどうすれば良かったのか。まず食事の時間を大切にすべきだろう。週に一度でもいい、無理を押してでも親が子供のことを考え、子供と向き合って見つめる食事の場を設けることは非常に重要である。A君の家では、日曜日も父親は仕事と称して出かけ、母親は手間をかけた料理を作る気にもならず、息子が食べている時間にも背を向けて洗い物をし、A君が食べる傍そばから食器を下げるような慌ただしい状態だったようだ。

A君は親の愛情ある言葉に飢えていた。ゆっくりと食事をし、彼の美点を言葉にして語る、あるいは、幼少の頃のA君の子育ての最中で感じた小さな感動を思い出しながら語るのもいいだろう。いつも同じ話だ、はいはい、と言われても避ける必要はない。いい思い出、自分の長所、幼少期の頃の親の感動、これらが語られるとき、子供の中には自尊感情が芽生える。

不登校の危険性が高まっている子供に、私がA君に言ったような忠告は間違いなく効果的だ。ゆっくり話し、心配や侮蔑を消去し、本当に愛情をこめて話す。これがコツである。

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