20カ国以上で現地版が放送されている

そもそも「SASUKE」は、1997年にTBSの看板番組だった「筋肉番付」の特別番組として始まった。以降、緑山スタジオに番組を象徴するファイナルステージなどの巨大セットが組まれ、現在も不定期で放送が続いている長寿番組だ。今年で25年目を迎え、第40回記念大会の開催を予定している。

2005年からは香港での放送が開始され、海外展開が進められていった。2006年にはアメリカで「ニンジャ・ウォリアー」の番組タイトルで放送がスタートし、人気番組になっていく。2011年には日本発の実写番組で史上初めて米4大ネットワークNBCのプライムタイムに昇格し、高視聴率を獲得するNBCの看板番組の1つとして現在も続いている。

写真提供=©️NBC
アメリカ現地版に参加した又地諒選手

さらに、アメリカでの成功によって、各国でも現地版が作られるようになっていく。20カ国以上で実績を作り、イギリスやドイツ、オーストラリアやイスラエルなどでも超ヒット番組として成功している。

女性選手の完全制覇がきっかけで全世代に愛される番組に

「SASUKE」はスポーツバラエティ番組の先駆け的存在だ。だが、単なるヒット番組に終わらず、海外では社会現象となっていった。子どもから大人まで、男女問わず人気を集め、ブランド価値を生み出している。いわば、ディズニー式の展開で成功したのだ。これが五輪競技候補へと導いた2つ目の理由だ。

女性として初めて完全制覇を達成したケイシー・カタンザロ選手(写真提供=©️NBC)

潮目が変わったのは、女性選手の活躍にあるだろう。2014年にアメリカでケイシー・カタンザロ選手が女性として初めて予選を完全制覇した。この出来事はたちまち話題となり、SNSで一気に“バズった”のだ。今でこそSNSを活用したマーケティング手法は当たり前だが、当時はSNSから一気に番組人気へ火が付くことはまだ珍しかった。

「SASUKE」を放送するNBCも盛り上げ、ライバルのABCやCNNなどアメリカの各メディアがこぞって取り上げていったという。

これをきっかけに、好循環サイクルが加速する。女性の参加者そのものも増え、ジェシー・グラフ選手など新たなスターが番組から次々と誕生し、女性ファンも増やす。また子どもからの支持も集まるようにった。日本ではM1層(男20〜34歳)やF1層(女20〜34歳)と比べると、C層(4~12歳)の視聴率は弱いが、アメリカでは全年齢区分で高視聴率を獲得する。家族で安心して視聴できる番組として認識されている。

ついにはキッズ版「ニンジャ・ウォリアー・ジュニア」まで作られている。TBSが現地で聞いた話によると、幼稚園では園児の多くが「将来の夢は“ニンジャ”になりたい」と答えたほどの人気ぶりだ。