さらにパーソル総合研究所の2019年の調査によると、「現在の勤務先で働き続けたい人の割合」で、日本は52%と調査対象国の中で最低水準です。同じ調査では、転職意向のある人の割合は25%、独立・起業志向のある人の割合は16%で、やはり最低水準です。

つまり日本人は、自分の勤め先に不満があり、ずっと働き続けたいとは考えていないが、転職するつもりも、起業するつもりもない、ということです。

なぜ日本人は「人づくり」に消極的なのか

しかも企業は人に投資せず、個人も学ぼうとしていません。

人材投資(OJT以外)のGDP比を比較すると、アメリカが2.08、ドイツが1.20、イギリスが1.06であるのに対し、日本は0.10です。また社外学習・自己啓発を行っていない人の割合は、日本は46%でダントツに高い。グラフをみると、諸外国との違いは歴然です。

日本の人材投資は先進国の中でも少なく、社外学習や自己啓発を行っていない人も多い(出所=「未来人材ビジョン」P40)

それはなぜか。転職が賃金増加につながらず、また企業内での昇進も遅いからです。

リクルートワークス研究所などの「転職前後の賃金変化の国際比較」によると、転職で給与が増えた人の割合は、中国が76%、アメリカが55%であるのに対し、日本はたったの23%です。

日本では転職しても賃金が変わらない傾向が強く、増加する割合が少ない(出所=「未来人材ビジョン」P37)

さらにリクルートワークス研究所の調査によると、日本は課長の昇進年齢が38.6歳、部長の昇進年齢が44.0歳ですが、アメリカは課長34.6歳、部長37.2歳、タイは課長30.0歳、部長32.0歳です。また、別の調査では、日本企業の部長の年収は、アメリカはもちろん、タイよりも低いことが示されています。

日本はアメリカや中国と比べて課長・部長への昇進が遅い(出所=「未来人材ビジョン」P36)

かつての日本は、新卒を一括採用することで「求められるものを安く大量に作れる人材」を多く育ててきました。それが世界経済における強みになっていたわけですが、いまは逆に弱みになってしまっているのではと感じます。低成長期に入っているのに、新卒一括採用や長期雇用のシステムはいまだに変わっていません。結果として、従業員の給料は上がりにくく昇進スピードも遅くなっています。