(ピクスタ=写真)

楽しい。つまらない。突き詰めれば、客はテーマパークをこの二択で峻別する。つくり手はその無邪気な“判決”に怯えつつ、あれこれ分析・検証し投資するが、客が求めているのは、分析や説明とは無縁の非日常である。

こんなハコモノがあって、こんなサービスがあって……と説明できてしまう凡百のテーマパークと、「モノ、コミュニケーションなどすべてが融合した三次元空間」と佐藤氏が自負するディズニーリゾートとの違いはどこにあるのか。

OLCの事業は、すでにワールドワイド、老若男女に親しまれているウォルト・ディズニーの世界を、日本流にアレンジして導入するのが基本。つぎはぎでなく、一貫性を持ちつつこれだけ拡張できるコンテンツは、他に類がない。

年間300億~400億円を投じてアトラクションの新規立ち上げ、スクラップ&ビルド、リニューアルを進めるほか、クリスマスやハロウィンなどイベントの企画開発にも1年強かける。「ディズニーランドは永遠に完成しない」というディズニーの言葉は、「飽きさせない」というテーマパーク運営の肝となり、潤沢な資本と相まってしっかり具現化されている。

さらに、OLCのソフト面を司る哲学は実にシンプルだ。

「楽しいから笑うのではなく、『笑うことで楽しくなる』のが基本。キャストが自ら楽しむことでゲストに楽しんでもらい、その相互作用でいい空間ができる。キャストがそれに生き甲斐を感じることが、ディズニーの哲学の根底にある。それを実現化するための仕組みづくりを日々積み重ねています」

こういう素に戻れるいい空間をつくれるのが我々の強み、と佐藤氏は言う。“素”とは、楽しいものを素直に楽しめる心理状態とでもいうべきか。そこには人間と娯楽との奥深い関係が垣間見える。

「人間の根源的な部分と、ウチのビジネスはリンクしていると思います」(同)――そこまで洞察するOLC。独走は続きそうだ。