日系企業やドラッチさんの勤める三菱自動車ウクライナが何もしていないというわけではない。しかしドラッチさんの目にはとても自分事として受け止めているようには見えないのだ。

今回、筆者は、車イスの前輪を浮かせて人力車のように引っ張る着脱式の補助具「JINRIKI QUICK(ジンリキ・クイック)」のキャラバンに参加した経験からウクライナ人の行動力と組織力を称賛した。するとドラッチさんは「何かが頭の上に落ちて来たなら、誰でも非常に迅速に行動するはずです。そして私たちは今、祖国を(自分の一部として)感じているのです」と答えた。

「どの国も有能ですが、すべては動機にかかっています。ポーランドやイギリス、アメリカはウクライナを強く支持してくれています。彼らはウクライナが話していることを理解しています。ドイツやその他の国は問題を理解していないフリをしています。彼らは以前の正常な世界に戻ることを期待しています。しかし普通の世界に戻ることはないのです」

仏大統領「ロシアに恥をかかせてはならない」

ポーランドやバルト三国は、次は自分たちがロシアのウラジーミル・プーチン大統領のターゲットになることを理解している。一方、ドイツやフランスは塀の上で様子見を続けている。「ハンガリーはロシアに非常に協力的です。お金の話は戦争がない時にするもので、眼の前で子供たちが殺されている時に塀の上に座ってお金の話をすることは許されないはずです」

アンゲラ・メルケル前独首相は引退後初のインタビューで、ロシアとのエスカレーションを防ぐために「私は十分に努力した。成功しなかったことは大きな悲しみだ」と自己弁護した。エマニュエル・マクロン仏大統領は「ロシアに恥をかかせてはならない。そうすれば戦闘が終わった時に外交ルートを通じて問題を解決することができる」と述べ、批判を浴びた。

「あなたはある国が他国の人々を殺すことを認めるのですか。大きな国が小さな国を殺すことを黙って受け入れるのですか。世界が前世紀に戻ることを認めるのか、それとも認めないのか。境界線を示すべきです。多くのロシアの軍用機には日本やフランスなど西側製のパーツが使われているのです」

西側企業は「平和の配当」を隠れ蓑に、軍民両用技術だけでなく、軍事の専門技術をロシアに輸出して利益を上げてきた。ドラッチさんはこの戦争で、自分たちの価値観を犠牲にしてまでロシアとのビジネスを継続することはできないと強調する。「今どちらの側に着くか、態度を決める必要があります」