たとえば2021年10月に東京と埼玉を襲った震度5強の地震は、2005年にも同じ場所で起きている。ところが2021年には前回にはなかったトラブルが多発し、その多くが水道管の破裂などのインフラの劣化が原因だった。

さらに日暮里・舎人ライナーが緊急停止した際に、先頭の3両が脱輪する事故も発生した。すなわち、16年間にインフラの老朽化が予想外に進んでいたため、被害が思ったより拡大したのである。

このように、首都圏では高速道路・鉄道・橋・トンネル・ビルなどの都市インフラと、水道管・ガス管・電線などのライフライン網などが、この10年ですべて劣化していると考えた方がよい。

過密都市で起きる「火災旋風」

地震の被害もさることながら地震に伴う火災の問題もある。首都直下地震の問題は、強震動による建物倒壊など直接の被害に留まらず、火災をはじめとする複合要因によって巨大災害となる点にある。

来年、発生後100年を迎える関東大震災では約10万人が死亡したが、そのうち9割が火災による死者だった。「火災旋風」という高さ200~300メートルに達する巨大な炎の渦が竜巻のように移動し火災を広げたのである。

これは火柱のように炎が渦を巻いて高く立ち上って大きな被害をもたらす現象で、ちょうど東京都庁舎に匹敵するサイズの火柱が立ち上がると考えられている。

具体的には、局所的に発生した火災がまだ火災が起きていない周辺から空気を取り込むことで、激しい上昇気流を発生させる。これが次々と増幅されて炎を伴った「燃える竜巻」になる。

関東大震災では人々が避難していた陸軍被服廠の空き地に旋風が襲来し、ここだけで3万8000人が亡くなった(鎌田浩毅著『京大人気講義 生き抜くための地震学』〈ちくま新書〉を参照)。

人口が過密な状態の首都圏で大地震が発生した場合、火災が必ず発生する。ちなみに、東京都は首都直下地震の犠牲者の4割は火災により発生すると試算している。

被害予測図を見ると、下町と言われる東京23区の東部では、地盤が軟弱なために建物の倒壊などの被害が強く懸念される(図表4)。

図表=筆者作成