東部では建物倒壊、西部では大火災
これに対して、23区の西部は東部に比べると地盤は良いが、木造住宅が密集しているために大火による災害が想定される。こうした地域は「木造住宅密集地域」(略して木密地域)と呼ばれ、防災上の最重要課題の一つとなっている。
たとえば、環状6号線と環状8号線の中に挟まれている、幅4メートル未満の道路に沿って古い木造建造物が密集する地域が、最も危険である(図表5)。
確かに木密地域は関東大震災当時と比べて減ったとはいえ、首都圏にはまだたくさん存在する。地震を生き延びても、潰れた木造家屋の火事で命を落とす可能性はなくなっていない。東京都も指摘するように木密地域は減ったとは言え、耐震化を施していない住宅がまだ多数残っていることを忘れてはならない。
明日起こるかもしれない「ロシアン・ルーレット」
政府の地震調査研究推進本部によると、首都直下地震の発生確率は今後30年間で約70%である。ここで大事なポイントは、こうした活断層が動く日時を前もって予知することは、現在の地震学ではまったく不可能だということである(鎌田浩毅著『首都直下地震と南海トラフ』〈MdN新書〉を参照)。
すなわち、首都直下地震の発生は30年後かもしれないし、明日起こるかもしれないのだ。
近年、地震学会も認めたように首都直下地震の発生時期は予知できないため、不意打ちとならざるを得ない。言わば「ロシアン・ルーレット」状況にあるので、「不意打ちに遭うのが当たり前」と覚悟して首都圏に住まなければならないのである。
今後、劣化しつつあるインフラを早急に整備すれば、被害予測はさらに下げることができる。東京都は2025年を目標に耐震化と不燃化を積極的に支援している。よって、被害を最小限にするためにも、一人ひとりが過密都市にまつわる「最悪の事態」を想定し、しっかり備えていただきたい。