イギリスの政治文化誌『ニュー・ステイツマン』は6月2日、病状を指摘する一連の報道について、「はっきりさせておくと、プーチンが重病を患っているという検証可能な証拠はない」と切り捨てている。失脚のシナリオは希望的観測にすぎないとの指摘だ。

ただし同誌は、「今日までで最も信憑性のある報告」として、ロシア独立系報道サイトの『プロークト』がリークした旅行関連書類に一定の信憑性を認めている。4月1日の報道によると、黒海付近に構える自邸への帰宅の際、腫瘍外科医1名と耳鼻科医2名が同行したことがわかっている。甲状腺がんを患っているとの分析と符合するものだと同誌は捉えている。

このリーク以外の「諜報筋による情報」に関しては、100%信頼のおけるものではない。しかしながら、プーチン重篤の報道が積み重なることで、諜報戦上の重大な意義を生じてゆくはずだ。同誌は、「疑念が長引き彼が過去の男とみなされ始めたならば、大統領の健康に関するこうした絶え間ない考察は、彼にとって危険な存在となるだろう」と指摘する。

記事は続ける。「誰も公の場で口火を切りたがらないが、プーチンが病に伏せていることがひとたび明白になったならば、彼の盟友も宿敵も……そして新たな地位を喜ぶ両陣営の人々も、本腰を入れて彼のすげ替え工作に着手するだろう」。MI6は死亡説の流布を通じ、クレムリン内部に揺さぶりをかけているとも捉えられる。

MI6本部(写真=Ank Kumar/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

英諜報機関の元トップ「プーチンは来年までに失脚する」

すでに死亡したとの指摘は非常に大胆だが、より堅実な分析としては、手術期間中に今後影武者が代役を果たす可能性が濃厚だ。プーチンはがんを含む複数の重篤な病を患っているとみられており、近い時期にがん関連の手術を受ける可能性が高い。

米ニューヨーク・ポスト紙は、反プーチンのテレグラム・チャンネル『ジェネラル SVR』による情報として、近く予定されている手術でプーチンは最大10日間ほど公務を離れることになると報じている。手術の事実を隠蔽いんぺいするため、手術中および術後の静養期間に影武者が公務にあたる計画であり、「ボディ・ダブルらがスタンバイ体制に入った」と同紙は報じている。

プーチンに関しては引退を促す動きが水面下で起きており、手術が成功したとしても政治生命は長くなさそうだ。元MI6長官のリチャード・ディアラヴ卿など複数の情報筋が、プーチンは来年までに失脚するとの観測を明かしている。

ニューヨーク・ポスト紙など複数のメディアが報じたところによると、ディアラヴ卿はポッドキャスト番組『One Decision』のなかで、プーチンが治療のため2023年までにサナトリウムに送られるとの予測を明かした。これは政界から遠ざけるための手段として機能し、独裁政権に幕を下ろすための「出口戦略の一環」の役割を果たすのではないかと氏は予測している。