大人は形から入りたい

——ということで、電車に乗って、多摩川の土手に行ってきました。土手を登ると、目の前でゴルフの練習に興じるおじさんたちや、ランニングする若い女性、芝生で駆けっこしている子どもがいて、それぞれ楽しんでいるように見えました。

憩いの場だったでしょ?

——はい。土手の向こう側ではゆったりとした時間が流れているのも実感しました。原っぱを眺めながら飲む缶コーヒーは、いつもより美味しい気がしました。

うんうん。

——でも、やっぱり、これがソロキャンプの楽しさにつながっているのかは、まだわかりませんでした。……なんといいますか、大人だから、もう少し形から入りたいかなと。

なるほど。つまり、キャンプ道具を揃えるとか、焚き火をするとか、そういうことから入りたいってことですね?

——おっしゃる通りです。

気持ちはわかります。近くの川に行って、缶コーヒーを飲むだけでも自然の中で過ごす良さは伝わると思ったんですけどね。いきなりキャンプ道具を揃えるのはハードルが高いとも思いましたし。でも、物足りなかったんですね?

——はい。

では、キャンプ場に行くことから始めましょう。

写真=iStock.com/Stossi mammot
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窮屈な世の中だからこそ、自由をひとりで享受する

——そもそもソロキャンプって、どこですればいいのでしょうか? 東京に住んでいて、キャンプ場がどこにあるのか聞かれても、すぐには思いつきません。

僕はあまりこういうことをいわないけど、「ググレカス」ってことですよね。結論からいえば、自分の住んでいる「都道府県名」に「キャンプ場」とか「バーベキュー」と加えて、ネット検索をすることから始めるのがいいと思います。

グーグルで、たとえば「島根県」「キャンプ場」と検索すると、こうやって地図で出てくるんですね。

——なるほど。地図の左に評価も出ますね。この評価がいいところに行けばいいんですか?

それはどうかな……。評価がいいところは、人気キャンプ場です。一般的には、ほぼハズレはないです。ただし、「ヒロシ流」のソロキャンプは、そういった人気キャンプ場を選びません。人気キャンプ場は、人が多いですから。

——なるほど! 人気キャンプ場を避けるために、ネット検索を使うんですね。

そういうことです。でも、今はキャンプ場を探すのも一苦労かもしれませんね。

僕は九州の田舎町で育ちましたが、子どもの頃はどこでも勝手にキャンプをやっていました。海で拾った貝を焚き火で焼いて食べたり、野山に食材と鍋を持ち込んで、子どもたちだけでご飯を作ったりしていました。

近所の庭や空き地でも、落ち葉で焚き火して焼き芋を作る、みたいなことを皆がやっていましたから。

今、都会の河原や公園で勝手にテントを張ったら、怒られるんですよね。自分の土地でも、庭で落ち葉を集めて焚き火をしたら、近所から「煙が流れてきて困るんですけど……」とか「火事になるのでは?」といったクレームを入れられるかもしれない。

——今は焚き火すら、自由にできなくなっていると思います。

僕が子どもの頃よりも、ルールはちゃんとしているけど、ちょっと息苦しい状況ですよね。昔は自由にやれたけど、今は決まったところでやらないといけない。ルールにのっとってやるしかないんだから。

——ちょっと窮屈な世の中だからこそ、ソロキャンプをやりたい気もします。

ええ。キャンプ場で許される自由を、ひとりで享受すればいいんですよね。