「『うんち』の形が変わる……?」

「そうなんだ。たとえば、ヒトの腸内細菌は、ヒトが生活していくうえで役に立つ善玉菌と、悪さをする悪玉菌、それ以外の日和見菌に分けられる。腸の中で繁殖しているこれら三つのグループの生存比が、なんらかの原因でバランスを崩すと、宿主であるそのヒトの体調も変わってしまうことがある。そうなると『うんち』の形が変わって、下痢状や軟便、便秘になるんだ」

いつもより臭いおならが出たら要注意

腸内細菌は、腸内にある消化物を栄養源としながら「寄生生活」を送っています。

腸内細菌の体内における代謝の過程で合成された「においのある物質」が放出されることでも、「うんち特有のにおい」が発生します。

ミエルダが補足してくれます。

「腸内細菌の種類によって、放出される『においのある物質』の種類も量も異なるんだ。肛門から出る『おなら』のにおいは健康状態によってさまざまに異なるけれど、それは腸内細菌の種類と生存比が、腸の持ち主の状態を反映しているからだ」

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「たとえば、ふだんより臭い『おなら』が出たら、健康状態が良くない可能性がある。便秘のときには『硬いうんち』となり、下痢のときには『水状のうんち』となって、そのにおいが違ってくる。『うんち』や『おなら』のにおいで、自分の健康状態をある程度、把握することができるんだ」

1000兆個の腸内細菌が健康を守っている

「どんな『うんち』にも、必ず腸内細菌がいるの?」

「そのとおり。腸内細菌は、ほとんどの動物の消化管に寄生している。たとえば、哺乳類では、子ども(胎児)がお母さんの子宮の中にいるあいだは無菌状態で、その胎児の体内に細菌はいない」

「でも、その子どもが生まれた後には、口と肛門から細菌が消化管に侵入したり、母親から与えられる母乳とともに細菌が消化管にやってきてすみついたりすることになるんだ。鳥類の場合は、卵の中にいるヒナについては無菌状態だけど、孵化後、親鳥との接触やエサを通して細菌が口と肛門から侵入し、消化管内で腸内細菌になっていく」

「消化管の中には、どれくらいの数の腸内細菌がいるの?」

「個々の腸内細菌は目には見えないほど小さいけれど、その数は膨大だ。ヒトでいえば、健康な成人の大腸に寄生する腸内細菌の数は600兆~1000兆個で、その種数は約500~1000種類、重量は1~1.5キログラムほどと考えられている。そして、その細菌の種類と数は、個人や動物の個体によってさまざまであり、先に述べたように、一個人の中でも体調によって、腸内細菌の生存比などの状況が変わりうる」