自分でより説得的な説を示すことで間違いと判断する

この問題で難しいのは、「怪しい」と感じたあとです。「怪しい」を「間違い」という判断に持っていくためには、少し労力が必要なのです。

ここで「間違い」と判断する枠組みを示しておきます。

今回の問題に関して「怪しい」を「間違い」に導く手順は、問の中で簡単に述べています。つまり、「より説得的な別の説(要因)を示す」ことです。以下これを「自説」と呼びます。

「怪しい」と感じたら、まず相手の説の内容を把握します。そして、これに対抗できる自説を用意するのです。

「相手の説の内容を把握」と表現すると難解かもしれませんが、これも問の文章にヒントがあります。問の文章では、見栄っ張り(要因)→10万人当たり美容院数(結果)と、相手の議論を因果関係で整理しなおしているのです。先ほど等号(=)で考えた部分は矢印(→)、つまり因果関係として捉えられるものなのです。

今回の問題箇所を因果関係の矢印で表現しなおし、自説を用意するという心構えを持てば、相手の説を間違いと判断するために自分(読み手)は、「見栄っ張り」に代わる別の要因を探せばよいことがはっきりしてきます。

そのうえで、相手と自分の説を比較し、自分の説のほうが説得的で、相手の説が説得的でないなら、相手の説を「間違い」と判断するのです。ここで「説得的」は、その説を支持する根拠がある、という意味で捉えてください。単純に言えば、自説を支持し相手説を支持しない根拠があれば自説の勝ち、ということです。

相手の説を倒すのではなく、自説とその根拠を探す

つまり、怪しい言説を否定するのに必要なのは、自説とその根拠です。したがって以下では、いかに相手の説を倒すかではなく、どうやったら自分の説とその根拠を探すことができるのかという点を中心に解説することになります。

それでは、この自説とその根拠はどのように見つければよいでしょうか? ここでは、①焦点となっているデータ(数字)を観察する、②その数字の因果構造を探る、③データを分析する、という3つの作業を行います。

今回の問題のように、数字の意味が焦点となる場合には、特に①が鍵となります。①を行い、相手説とは異なる要因を②で思いつけばそれが自説です。さらに③で自説を支持する分析結果を出せれば、それが根拠となります。

ただし、焦点となっているデータが示されていないことはよくあります。ネットで検索すれば大抵すぐに見つかるので、特にデータ分析に関わりたいとお考えの方は、手間を惜しまず探すとよいでしょう。どんなものでも、経験を重ねることは重要ですので。今回はそうした手間を省いて図表1を示しました。さっそく、この数字を観察してみましょう。