東京の10万人当たり美容院数が少し多いのは商圏人口が多いから

それでは、東京都の10万人当たり美容院数が超大都市のわりに多いのはなぜでしょうか。おそらくそれは、周辺3県からも来客が期待できるためです。言い換えると、東京都はその人口以上に商圏人口が多いのです。鉄道や道路は東京を中心に延びていますし、何より多くの人々が周囲3県から東京都に通勤、通学しています。

これに対して、農村部の美容院はどうでしょうか。ひとつの市街地、ひとつの集落を商圏として、都会の美容院に比べて細々と続けているイメージでしょうか。東京都のように郊外からの通勤者が寄ることや沿線に広告を打って集客することはあまりなさそうです。

ここで商圏という要素がひとつ浮かんできました。これを種に、多少偏見でも構いませんので、具体的なイメージを浮かべていろいろ想像してみましょう。

渋谷のスクランブル交差点
写真=iStock.com/Eloi_Omella
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都市部の商圏の広い美容院と農村部の商圏の狭い美容院とでは、どのような違いがあるでしょうか。たとえば前者は、美容院の規模が大きく、高回転で客をさばいているように思います。駅前などの集客しやすい場所に賃貸で店舗を構え、多数の若いスタッフが朝から晩まで働いている、そういう店舗が想像できます。一方、農村部の美容院は初老の夫婦が店舗兼自宅で営業していて、客がいない間は孫が店の中で遊んでいるようなイメージでしょうか。きっと昔ながらの頭を覆う加温機も置いてあるのでしょう。

こうした想像を経ると、図表1は都市部の美容院は1軒当たりの規模が大きいため、人口当たりの美容院数は少なくなっていると読めるようになるでしょう。もっと細かく説明して、都市部の美容院は賃料が高いので農村部に比べて多数の客を効率的に集めないとやっていけず、企業的な美容院が多くなり、人口当たりの美容院の数は少なくなる、といったことを言ってももちろん構いません。

いずれにしても、「店舗規模の大きな地域では美容院が少なくなる」のほうが、「都市部では美容院が少なくなる」より納得できる説明でしょう。

以上から、美容院の店舗の規模が、図表2の?、つまり都市度と人口10万人当たり美容院数の間に入る要因ではないかと言うことができます。