「ネット選挙」解禁以来、マスコミはSNSを分析した報道を繰り返すようになったが、その多くは失敗に終わっている。なぜ誤った分析がなされてしまうのか。政治学者の菅原琢さんの著書『データ分析読解の技術』(中公新書ラクレ)より、一部を紹介する――。
新聞紙
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

ツイート「拡散」が共産党躍進を生んだというデータ分析

次の図表1と新聞記事を読み、続く問いに答えてください。

参院選(7月4日公示、21日投開票)が自民党の大勝に終わったのを受け、毎日新聞と立命館大は、参院選で解禁されたインターネット選挙運動(ネット選挙)が当落に与えた影響を分析した。選挙区で2人しか落選しなかった自民党や、惨敗した民主党の候補者では、ネット上の運動量と得票数の間に相関は認められず、ネット選挙は大勢に影響しなかったと言える。ただ、改選3議席から8議席に躍進した共産党に限れば、組織的にツイッターを積極活用した「ネット効果」がデータに表れた。

毎日新聞と立命館大のネット選挙共同研究では、ツイッター利用者と各党候補者の投稿(ツイート)を収集・分析し、選挙への影響を検証してきた。これまでに共産党候補者のツイートがツイッター利用者による引用・転送(リツイート=RT)によって効果的に拡散し、民主党候補者のツイートはRTによる拡散力が弱い傾向が判明している。

共産党は12年ぶりに選挙区で議席を獲得。RT数が3万1000件に達した吉良佳子氏(東京)は70万票、2万5000件の辰巳孝太郎氏(大阪)も46万票を得た。落選者でもRT数1万件以上が4人おり、うち2人は得票数が25万票を上回った。比例当選者も2人がRT数1万件を超え、RTによる拡散力と得票数の相関が認められた。

※引用元:「共産に『ネット効果』 本紙・立命館大分析」『毎日新聞』2013年7月31日朝刊(一部省略)

問 ネット選挙運動が当落に与えた影響を分析したとするこの記事は、共産党候補のツイッターへの投稿(ツイート、呟き)の拡散(リツイート、RT)が、共産党候補の当落や得票数に影響を与えたこと、さらには2013年参院選での共産党の躍進の要因であることを示唆しています。すなわち、共産党候補の当落や得票数を結果、呟きの拡散を要因とする因果関係の存在を主張したいようです。その根拠として提示されたのが、①RT数を横軸、②共産党候補の得票数を縦軸に配し、両者が相関しているように見える図表1の散布図です。

そこで、この①②共通の要因となる交絡因子を1つ提示することで、そのような因果関係は幻である可能性が高いと指摘してください。

注:交絡因子……2つの要素の間に相関関係を生み出す第3の要素

この先にはヒントとなる解説が書かれています。選挙権のない18歳未満の方、お急ぎの方、まだデータ分析に慣れてない方は、問題の内容を理解したらすぐに読み進めるとよいでしょう。